世界資源戦争 57 多極化時代の「世界資源戦争」の新たな局面
大気中に排出されたCO2を科学技術によって回収し、海洋や地中に貯蔵する技術。これが実用化されれば、世界が直面している温暖化の最良の方策となるとされている。しかし課題も多い。まず、実施するために化石燃料の使用量が増える可能性があることだ。つまりCO2を回収・貯蔵するために新たなCO2を排出するという矛盾が生じるのである。
もうひとつの大きな課題はコストだ。石炭火力発電所から分離・回収する二酸化炭素を枯渇したガス田に貯蔵する実証実験が、福島県で2011年まで実施される。その分離・回収施設が実用化されるまでにかかる費用は5000億円とのことだ。国と一般企業が協同で事業を進めている。
一方、イギリスでは石油大手BP社が2004年からアルジェリアで実証実験を進めているほか、リオ・ティントと共同でオーストラリア西部の発電所でも実用化を探るための実験を続けている。海外では、すでに商業化を目前としているといわれている。カナダのワイバーン油田でも2000年9月から、CO2圧入の実証実験が始まっている。325キロ離れた米国の石炭ガス化工場で発生したCO2をパイプラインで輸送し、年間100万トン規模で20年間、総量2000万トンの圧入を計画しているという。
この分野は研究を始めて日が浅いこともあり、その効果や環境に及ぼす影響などまだ不明な点が多い。しかし、逸早く商業化した国や企業が大きな利益を得ることになるため、「世界資源戦争」の新たな局面であることだけは確かだ。
一方、今後の資源争奪戦を握るであろうと想像できる水素エネルギーはすでに実用化に入っている。冬季の暖房費に多くのコストを要する北欧やドイツでは、石油にかわる燃料として水素エネルギーを推奨している。
天然資源に乏しく、自給率も低い日本が「世界資源戦争」に生き残る道は、省エネ技術の開発とその技術を活かすプラント建設に尽きるだろう。前述したCO2分離・回収技術の開発では、日本はトップグループにいる。これを実用化し、海外に技術移転できれば、太陽電池同様、大きな市場を確保できる。
また、CO2排出量が増大しつづけている中国とインドなどは、日本が1960~70年代に体験した、経済成長の負の側面である公害に直面している。日本の環境技術は、大いに役立つはずだ。砂漠の緑化技術や海水の淡水化技術は、アフリカや中東、中国、インドが欲している技術だ。これも日本のメーカーや商社が海外で実績を挙げている。
このように「世界資源戦争」の未来を見ていくと、ロシアやカナダ、オーストラリアといった「資源大国」と日本や韓国のような「非資源大国」という座標軸のほかに、「技術大国」と「非技術国」、「技術輸出国」と「技術輸入国」という座標軸があることがわかる。
日本では近年、都市に眠る「都市鉱山」が脚光をあびている。日本人が廃棄するクルマや家電、パソコンや携帯電話は、レアメタルを有する宝の山だ。見方を変えれば、日本はレアメタルの資源大国となる。大切なのは、スクラップから貴重な資源を回収し、再利用できるようにする技術だ。しかも、石油を使わずして回収、再加工する方法が求められている。借金をしても続ける大量生産大量消費によって、世界の消費をリードしてきたアメリカ経済が低迷している現在、世界経済に影響力をもつ国は、ロシアやEU、中国、サウジアラビア、ブラジル、シンガポールなど多極化している。
「世界資源戦争」は、多極化する時代にどんな進展を見せるのだろうか。渦中にありながらも客観的な視点で今後もその変遷を見続けていきたい。 (完)
By Master K/益田 慶