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世界資源戦争 53 欧州のエネルギー政策 太陽光発電

「地球の全陸地の約1%にあたる面積に太陽電池を敷きつめれば、全人類のエネルギー需要量に匹敵する発電量が得られる」という試算がある。その試算が正しければ、石炭を燃料とする火力発電は必要なくなり、石油に依存しないクリーンエネルギーが世界を満たすことになる。


太陽電池を使って太陽エネルギーを直接電力に変換する太陽光発電は、燃料を運んだり、購入したりする調達コストがかからず、温室効果ガスの排出量が少ないことから、石油の代替エネルギーの本命とみなされている。それを裏づけるかのように、普及を促進する政策や発電にかかるコストの低減化によって商業化が加速し、世界各国で大型の太陽光発電所が相次いで建設されている。


欧州で進んでいるのがドイツ、スペイン、イタリアだ。EU各国は域内の再生エネルギー利用率の割合を2010年までに12%に高める目標を掲げており、再生エネルギー発電の導入を政策面で支援している。


ドイツは2000年、太陽光、風力、水力、バイオマス、廃棄物埋め立て地や下水処理施設から発生するメタンガスなど、再生可能エネルギーの普及を促進する法律「再生可能エネルギー法」を制定した。再生可能なエネルギーによって生産された電力を電力会社が20年間にわたり市場価格より高い固定価格で買い取ることを義務づけている。2004年の改正では、総電力供給に占める再生エネルギーの割合を2010年までに12.5%、2020年までに20%以上にすることが定められた。この先駆的な法律が先進国に与えた影響は大きい。

電力の固定価格買い取り制度は、市場の成長を大きく促進した。事業所や家庭が太陽電池で発電した電力を、電力会社が市場価格より高く買い取るよう義務づけたもので、太陽光による発電分は通常の電力価格の2~3倍で買い取られる。毎年5%ずつ引き下げられるが、20年間は買い取りが保証され、約10年で 初期費用が回収できる計算だ。


この法律の施行により、ドイツでは風力発電所が相次いで建設され、自宅の屋根に太陽光発電システムを取りつける人が急増した。また、確実に利益があがることがわかった投資家が発電事業に投資するようになった。潤沢な資金を得たエネルギー企業は大型施設の建設が可能になった。国際競争力を養うことも容易になった。こうしてドイツは、再生可能エネルギー施設が生みだす電力生産量世界第1位の国となった。

スペインでは2006年に大型太陽光発電事業への優遇制度が施行されたことを受け、太陽光発電所の建設が相次いでいる。欧州における太陽光発電設備の設置容量は現在ドイツに次ぐ第2位だ。特に大規模な太陽電池設置による太陽光発電では世界をリードする存在になっている。この太陽光発電や太陽熱発電、風力発電をスペインの主力産業のひとつに育て上げようという動きもある。


もともとスペインは雨が少なく日光が差す日が多いため、太陽光発電にはうってつけの国。それが太陽光発電などの再生可能エネルギーの開発を促進する一因にもなった。太陽電池のニーズは極めて大きく、スペインは太陽電池の出荷数で世界有数の量を誇っている。今後はこれから成長を続けるであろう発展途上国に向けた輸出に力を注いでいくだろう。


事実、太陽電池の世界需要の成長率は40%を超えている。牽引するドイツの累積導入量は2005年に日本を抜いて世界首位となり、2006年の市場規模は日本の約3倍に急拡大した。ドイツ、スペインでの普及が拡大し、全世界における2007年の新エネルギーへの投融資は850億ドルと前年より20%上回った。

「世界資源戦争」は地下資源の有無だけでなく、再生可能エネルギーの技術開発力にまで及んでいる。本来はシャープやサンヨーなどの日本企業が世界をリードする立場にあったはず。それがドイツ、スペインの後塵を拝することになるとは誰が想像しただろうか。


By Master K/益田 慶