100年企業 57 産業別100年企業 印刷・インク業界
日本の印刷業界の2強、大日本印刷と凸版印刷はともに「100年企業」だ。単体で1兆円の年間売上を上げる大日本印刷の創業は、前身となる「秀英舎」が活版印刷を始めた1876年。それは数名の共同出資による印刷工場の設立であった。1935年に「日清印刷」と合併した際に「大日本印刷」に改称。
現在は印刷技術を中心に据え、情報産業やエレクトロニクス分野にも進出し、拠点もニューヨーク、ロンドン、上海、シドニーなど全世界に広がっている。2006年には、コニカミノルタが写真フィルム・印画紙事業から撤退したのに伴い、これらの事業を譲り受けた。グループ会社が多くあり、その業種業態は多岐にわたっている。意外な系列会社に北海道コカ・コーラボトリングがある。
単体売上9470億の凸版印刷の創業は1900年。社名は、当時の最先端印刷技術であるエルヘート凸版法に由来する。大蔵省印刷局出身の技術者を中心に設立された。現在、事業は印刷のみならずデジタル画像処理やエレクトロニクス製品にも力を注いでおり、液晶用カラーフィルタの生産高は世界首位。身近なものでは、通帳や宝くじICカードやクレジットカードも同社の製品である。後述するインクメーカー「東洋インク製造」の大株主でもある。
1897年の創業の「共同印刷」は、前身の「博文館印刷所」の誕生をもって創業としている。博文館主の大橋佐平が自社の書籍・雑誌を印刷するため、現在の東京銀座に工場を設立したのが始まりだ。印刷業界では大日本、凸版に続く第3位の売上。同社も印刷だけに留まらず、ICカードや建材も製造している。後述するインクメーカーの最大手「DIC」(ディーアイシー)が筆頭株主となっている。
印刷会社に欠かせないのがインクだ。インク会社は業態としては化学メーカーとなる。業界最古参は1896年創業の「東洋インキ製造」と「サカタインクス」だ。前者は創業者小林鎌太郎が現在の中央区日本橋に個人経営の「小林インキ店」を開業したのがルーツ。1926年には逸早く上海に出張所を出すなど海外進出も展開。印刷インクトップの売上高を誇る。
塗料・樹脂・粘接着剤・高機能性素材といった高分子事業と顔料・着色剤・電子メディア材料などの色材事業を基幹事業とし、画像処理システムも展開している。前出した凸版印刷が筆頭株主となっている。「サカタインクス」は、新聞インキの製造・販売を目的として大阪で創業した「阪田インキ製造所」がルーツ。東洋インキ、DICに続く業界第3位のメーカーだが、業界トップの東洋インキが筆頭株主となっている。
「DIC」(旧大日本インキ化学工業)は、1908年に創業した「川村インキ製造所」を起源としているので、2008年がちょうど創業100年にあたる。その節目の年を記念して社名を「大日本インキ化学工業」から「DIC」に改称。売上高は連結で1兆157億円を上げ、インクを主力商品とするメーカーとしては世界最大手。印刷インクのみならず、合成樹脂材、電子情報材料の製造も行なっている。海外進出にも精力的で世界60ヵ国に所在する関係会社は213社にのぼる。また、前出した共同印刷の筆頭株主でもある。
こうして二つの業界の「100年企業」を見てみると、三つの企業グループの存在が浮き彫りになる。すなわち、(1)大日本印刷グループ (2)凸版印刷-東洋インキ-サカタインクス (3)DIC-共同印刷。共通しているのは、どのグループも「脱印刷」の方向にあること。印刷会社は情報産業、エレクトロニクス分野へ、インク会社は合成樹脂や電子情報材のメーカーへと発展している。 (完)
By Master K/益田 慶