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世界資源戦争 50 米国のエネルギー政策 再び脚光をあびる石炭

当初、温室効果ガス排出抑制に消極的だったブッシュ政権に対し、アメリカの大企業は新エネルギー源開発の視点から積極派に転じた。伝統的に大企業にとっての利益になることを最重視する米政府は、原子力発電を見直し、原子炉建設を進める方向に傾くなど方向転換を余儀なくされた。


資源高の予兆をつかんでいた米国政府は、外国産エネルギーへの依存度を低め、自国での自給率をアップするという方針で固まった。仮に民主党政権になっても、その方針は継続していくだろう。


しかし、サブプライムローン問題がカウンターパンチとなって、米国経済がリセッションに入るようだと、米国民のエネルギー消費量はグンと下がっていくという見方もある。その際に大いに活用されると予測されるのが、省エネ関連製品と新エネルギーである。石油を湯水のごとくジャブジャブ使っていた米国は、大きな転換期にさしかかっているのだ。


米国のエネルギー消費を調べると、2004年度統計では、石油40%、天然ガス23%、石炭23%、原子力8%、再生可能エネルギー(太陽、風力など)6%という割合だ。その後、2005年に「エネルギー政策法」が可決。そこには、次のような政策が記してある。主要な項目だけピックアップしておく。


●連邦政府に再生可能資源の調達率を2007年度で最低3%とし、2013年度までにこれを7.5%まで増大するよう義務付ける。
●2012年までに、連邦政府の年間電力消費量の少なくとも7.5%を再生可能エネルギーにする。
●ソーラー、風力、地熱、海洋、クローズドループ型バイオマスおよび埋立地ガスと家畜由来メタン利用のエネルギー生産を推進するインセンティブを認可する。
●内務省・商務省・農務省に、実行可能な限りでハイブリッド車やその他の高燃費自動車の使用を義務付ける。
●大統領のクリーンコール発電イニシアティブに2006年度から年間2億ドル、9年間で18億ドルを認可。この内、70%を石炭ガス化技術に、残りの30%をその他のクリーンコールプロジェクトに配分する。
●次世代原子力発電所プロジェクトに2006年度から10年間で13億ドルを認可。
●既存原子力発電所で水素を製造する実証プロジェクト2件に1億ドルを認可。
●ハイブリッド自動車や先進ディーゼル車の国内生産を推進するDOEプログラムを設置する。
●水素と燃料電池プログラムに2006年度から5年間で33億ドルを認可。

このうち興味深いのが、クリーンコール発電だ。世界の石炭分布を見ると米国、ロシア、中国、インド、オーストラリアという大国に集中していることがわかる。そのうち最も多くの石炭を有しているのが、じつは米国なのだ。


石炭は「燃やすとCO2を大量に排出する、前近代的な資源」あるいは「石炭は枯渇したのではないか」と考えがちだが、枯渇したのは日本市場であって米国のことではない。クリーンコール発電とは、既存の石炭火力発電所に比べて発電効率が1~2割高く、CO2排出量が少ない発電のことだ。米国や中国、インドなど石炭火力に依存する割合が高い国では、CO2排出抑制効果が期待されており、再び石炭に注目が集まっている。


日本国内でもクリーンコール発電の実証実験は行なわれている。東京電力など電力会社10社が共同出資するクリーンコールパワー研究所(福島県いわき市)の石炭ガス化複合発電実証プラントだ。これは国内需要を目的としたものでなく、石炭依存の高い米国や中国、インドに向けた輸出向けプラントの実証実験である。そこで、かつて文字通り「産業のエンジン」役を担った石炭に注目してみたい。世界資源戦争は、この「燃えるダイヤ」をめぐっても激しい争奪戦が続いているのだ。


By Master K/益田 慶