FXライフ 62 南アジアの通貨 インドとイギリス領インド洋地域
いずれ日本を抜いて世界第3位の経済大国になると予想されているインド。台頭してきた要因は、10億人もの人口と市場規模、ユーラシア大陸の中央に位置する地理学的な重要性、英語力に長け、人件費も安価であることなどが挙げられる。また、年率9%もの経済成長を遂げてきた背景に、規制緩和、外資導入、国営企業の民営化などを通じて競争原理に基づく市場経済体制を整えたことがある。
さらに、巨大な財閥による潤沢な民族資本がインドにフィードバックされていることも見逃せない。よくひきあいに出されるIT産業と金融産業の発展に欠かせないのが、在外インド人や留学生の存在だ。現在、米国に約200万人、世界全体では1500~2000万人のインド人が活躍し、キャリアを積んでいる。彼らがインドに戻って起業するUターン現象が起こっているのと同時に、大手IT企業や金融会社がインドに現地法人をつくり、インド人を教育してきた。
通貨は、ルピー(INR)。中央銀行は、インド連邦準備銀行。マンモハン・シン首相はインド準備銀行の総裁、財務大臣等を歴任し、90年代の新経済政策を推進してきた人物。経済成長も彼の手腕によるところが大きいと評価されている。
インドは独立以来、輸入代替工業化政策を進めてきたが、1991年の外貨危機を契機として「インド型社会主義」の実験を終え、経済自由化路線に転換した。そして、規制緩和、外資積極活用などを柱とした経済改革政策を断行した。
その結果、経済危機を克服しただけでなく、1990年代中盤には3年連続で7%を超える高い実質成長を達成した。2000年から2002年にかけて国際原油価格高や世界経済の減速などの影響があり、経済成長率は4~5%台に落ち込んだが、2003年から再び高成長に転じ、2005年度は9.0%、2006年度には9.4%の成長を達成した。原動力となったのは、前述したIT産業、金融業に加え、製薬、自動車、バイオテクノロジー、ハイテク関連産業などである。
2004年に発足したマンモハン・シン政権は、規制緩和や社会的弱者救済等の基本政策に基づき、農村開発や雇用対策に優先的に取り組むとともに、外資規制緩和や国営企業民営化等の経済自由化政策を継続している。主な貿易国は、アメリカ、中国、アラブ首長国連邦。インドはかつて産油国であったが、現在は純輸入国となり、アラブ首長国連邦から原油を輸入している。
しかし、ここ10年ほどインドの強みであった人件費の安さは、国内の人材不足により優位性を失いつつある。人件費の安さでいえば、現在ベトナムに軍配があがる。課題は地方の格差とインフラ整備だ。特に電力不足は大きな問題となっている。モンスーンが発生して気温が45度ぐらいまで上昇する夏場などは、クーラーを使用する事務所や家庭が増えるため、停電や電力の低下が起こりやすくなり、停電が発生している。
インドに進出した外国企業の多くは、工場で必要となる電力を自家発電によってまかなっているのが現状だ。農村部の44%の家庭には電力供給がなされておらず、夜になると村全体が真っ暗になってしまう地域も少なくないという。
インドは、急速な経済成長に伴う将来の電力不足に備えるため、発電設備容量の拡大や送電の効率化に躍起となっている。そこでインド政府は、米国とフランスから原子力発電事業を拡大するための支援を取り付けというわけだ。現在の主力電源は石炭を燃料とする火力発電だが、将来的には原子力発電を主要電源として活用していく計画である。
一方、イギリス領インド洋地域とは、1965年にチャゴス諸島を中心としたインド洋の約2300の島を含む地域で、イギリスの海外領土だ。行政本部はセーシェル共和国のビクトリアにあり、インド洋総監府として行政を執行している。チャゴス諸島はモルディブの南1600キロの場所にある。16世紀にポルトガル人に発見され、1814年よりイギリス領となった。一時期はモーリシャスの管轄として統治されていたが、1965年にモーリシャスから分離され、モーリシャス独立後もイギリス領として残されている。
By Master K/益田 慶