100年企業 48 産業別100年企業 飲料メーカー前編
日本酒の酒蔵には老舗が多いが、じつはビールやワインのメーカーにも「100年企業」はたくさんある。その多くは酒造業からのスタートで、現在も日本酒製造と並行してワインやビールの製造を行なっている。また、社名に「○○酒造」という具合に「酒造」がつく企業も少なくない。ワインも地ビールも製造免許が必要だが、老舗の日本酒メーカーは新規に始めるコストとリスクが少なく、また地元の老舗企業として社名が浸透しているため、ビールやワインのマーケットにも進出しやすいからである。
元禄年間(1688~1703年)創業の「富士錦酒造」(静岡県)は、日本酒「富士錦」ブランドで知られているが、地元産の良質の完熟梅を使った「芝川梅ワイン」をはじめ、「ゆずワイン」「甘夏ミカンワイン」など、ぶどう以外の果実を原料としたワインも製造している。同じく1753年創業の「武甲(ぶこう)酒造」(埼玉県秩父市)は、銘酒「武甲正宗」の醸造元だが、秩父ワインの製造も手がけている。ちなみに武甲酒造店舗は、国指定の登録有形文化財に指定されている。
山梨県の「甲州ワイナリー」は1834年に酒造業として創業した。1961年に果実酒醸造免許を取得し、甲州ぶどうを原料としたワインづくりを開始。「かざま甲州」のブランドで知られている。一方、「沖正宗」の蔵元である「浜田」(山形県米沢市)は1866年創業。「浜田酒造」の名で酒づくりを続け、1977年にはワイナリーを竣工。「シャトーモンサン」や「モンサン米沢」のブランドでワインを製造している。
老舗酒蔵が規制緩和により、地ビールメーカーを始めたケースも多い。1575年創業の「二軒茶屋餅角屋本店」(三重県伊勢市)は、もともとは社名にあるように餅の製造から始まったが、現在は伊勢の地ビールとして知られている。世界のビールコンテストで入賞したことで、ビールファンの注目を集めた。地ビールの銘柄「さがみビール」の製造元「黄金井酒造」(神奈川県厚木市)は1818年創業の蔵元。
ビールは清酒造りと同じく丹沢の名水を使い仕込んだケルシュ、アルト、スタウトだ。1823年創業の「木内酒造」(茨城県)は、地ビール「常陸野(ひたちの)ネストビール」の製造元として近年知名度が上昇している。1977年に「インターナショナルビアサミット」で金賞を受賞。2000年にオープンした「手作りビール工房」がマイビールをつくれるとあって人気を博し、地元では観光スポットやデートコースのひとつに挙げられている。
1822年創業の「寿酒造」(大阪府高槻市)は、摂津富田郷の酒造りを受け継ぐ老舗。ブランド「大阪國乃長ビール」を展開している。1837年創業の「北村酒造」は、7代目となる現社長が地ビールの製造を開始。「伊賀流ビール」と名づけられた地ビールを製造している。
日本酒の蔵元以外では、食品メーカーとして知られる「小田原鈴廣」(小田原市)が、「小田原エール」や「箱根ピルス」など地ビールの製造に乗り出し、成功している。「箱根ビール」の名前でプロモーションを展開し、連動するビアレストラン「箱根ビール蔵」の人気も上々だ。二つのビールが国際大会で入賞したことから、近年知名度がアップしている。
こうして見てみると、やはり圧倒的に老舗の蔵元が、ビールやワインの製造も手がけていることがわかる。業種を変えることなく、同じカテゴリーの商品を製造し、時代に合ったヒット商品をつくり続けることが、「老舗」の生き残り方なのだろう。
By Master K/益田 慶