世界資源戦争 43 廃資源を買い漁る中国の環境問題
廃棄処分される家電や通信機器、プラスチック、非金属スクラップ、古紙などを日本で買いつけ、大量に輸入している中国。経済成長によって資源不足に直面した中国は、資源の輸入と並行して産業廃棄物をリサイクルして国内で資源をつくることを考えた。中国での資源リサイクルは、ひとつの産業にもなりつつある。金属スクラップの輸入量だけでも年間推定で2,000万トン以上に及び、中国は、世界中のスクラップが集結した巨大なリサイクル市場になっている。
しかし、中国国内では有効活用できず、水銀などリサイクルに高度な技術を必要とし、途上国での処理が難しい資源もある。途上国への有害廃棄物輸出を禁じるバーゼル条約など、国境を越えたリサイクル資源の移動には障壁も多いが、中国はブローカーを通じて日本国内の資源を買い漁り、タンカーで中国国内に輸入してきた。
それと同時に、中国国内には解体業者が集まる町が生まれ、そこから排出される汚染された水が川に流され、田畑が汚染されるという公害が多発している。工場排水による河川汚染、輸入された電子廃棄による環境破壊や健康被害など、経済成長に環境対策が追いついていないのが現状だ。回収精度が低いため、資源が十分回収されないまま廃棄物として放置され、あちこちに「ゴミの山」が誕生しているとも聞く。これも「世界資源戦争」の横顔といえよう。
そこで、近年、進出しているのが、ドイツ、日本、韓国などのリサイクル技術を持った企業だ。具体的には、産業廃棄物からレアメタルを取り出す技術、水処理技術、空気清浄技術などだ。日本産業機械工業会の調査によれば、2006年度に日本から中国に輸出されたゴミ処理装置の総額は約86億円、大気汚染防止装置と水室汚濁防止装置はともに28億円だ。騒音振動防止装置を含めると、中国への環境装置の輸出額は年間142億円だ。
これは中国側のニーズとも合致している。中国にはリサイクル技術が蓄積されていない。現在の省エネ・環境分野における中国のニーズはどんどん広がっている。廃棄物の処理技術、環境装置のみならず、新エネルギーや燃料電池の開発、エコタウンのシステムづくりやリサイクルの促進に関するシステムづくりなど、ソフトの需要も高まっている。
しかし、その一方で、日本企業の技術や装置は高額なので、中国企業から「この機器だけ欲しい」といった要望が増えている。コアの技術は日本が進んでいるから買いたいが、他のものは自国でも調達できるかもしれないと考えているようだ。こういったケースでは、部分だけ購入しても全体の省エネ、環境問題の解決に十分な効果はあがらないのが現状。たとえば廃水処理は、特殊な膜だけ購入すれば、すべて解決するわけではない。装置を含めたシステムが必要だ。
さらに、日本企業が懸念していることがある。技術流出問題だ。中国人は、特許や知的財産、登録商標という概念が極めて低い。模倣品の数の多さがそれを物語っている。
技術流出を防ぐためには、大切な部分はブラックボックス化すること、特許の取得、模造品の製造の禁止など契約できちっと記すことなどが必要だ。法制度が整いつつあるので、知的財産権さえ、きちんと抑えれば不安は解消されるだろう。中国には、日本語を話せるは弁護士が多くいるので、活用しない手はない。
視点を変えるなら、技術流出の心配から日本企業が中国で環境装置を販売できないのなら、中国企業はドイツや韓国などの企業から技術を買うことになる。何年か先に次の技術が登場すると、現在の技術は古くなる。価値のあるうちに既存技術をどんどん販売し、その資金で次の研究をするほうが建設的だともいえる。「世界資源戦争」は、資源の売買と並行して、環境技術の売買という側面も持っている。
By Master K/益田 慶