FXライフ 55 東南アジアの通貨 フィリピンとブルネイ
7000を超える諸島から成るフィリピン。通貨はフィリピン・ペソ(PHP)だ。1997年のアジア通貨危機によってフィリピン・ペソの対米ドル相場が下落。物価上昇を背景に、消費者の購買力が低下し、経済成長は低迷した。しかし、タイやインドネシアなど周辺諸国と比較するとバブルの度合いが少なかった分、回復は早かった。
ペソの対ドルレートは、近年の財政収支の改善、海外からの証券投資流入や海外からの送金増などを背景に上昇を続けている。輸出型の企業には痛手となっているものの、2006年の貿易額は、輸出入ともに過去最高を記録した。
輸出全体の約6割を占めるエレクトロニクス製品は、世界的なIT需要の回復を受けて、2006年の輸出を牽引。ただし原油高の高騰がフィリピンにも大きな打撃を与えている。
フィリピンの主要産業は農業、電子・電気機器、サービス業などだが、食料の自給率は低い。GDPを支えているのは海外労働者の送金である。これがフィリピンの大きな特徴だ。フィリピンは海外労働の経済依存度が世界一高い国。人口の1割近くが米国、サウジアラビア、マレーシア、カナダなど海外で働いている。日本でも約30万人が働いているとされている。こういった海外労働者からの送金額がとてつもなく多い。2006年の海外からの送金額は、前年比17%増で過去最高の124億4,810万ドルに達している。これによって2006年度のGDPは6.2%という好調さだ。ただし10年続けて失業率が10%台を推移しており、貧富の差は著しい。
近年の穀物価格の高騰も大きな影響を与えている。さらに追い打ちをかけるように、インドやベトナムなど、アジアの米の輸出国が輸出制限措置を始めたことも国民生活を圧迫している。米の不作が続き、国内価格が高騰したことで、各国がフィリピン向けの輸出量を調整したのだ。フィリピンでは、消費者のまとめ買いを避けるために小売店が販売量を制限しており、2007年から小さな暴動が相次いでいる。
ブルネイは三重県とほぼ同じ面積の小国。正式国名はブルネイ・ダルサラーム国だ。マレーシア、インドネシア同様、イスラム国家だ。通貨はブルネイ・ドル(BND)。シンガポール・ドルと等価交換されている。
1984年にイギリスから独立した。マレー人から成る小国だが、石油と天然ガスが産出することから経済水準は高い。物価は高いが、その分、社会福祉が充実しており、個人に対する所得税は課税されない。また、国の規模に比べると国防費が大きいのも特徴だ。軍隊の装備は、イギリス、フランス、アメリカ製がほとんどを占めており、海軍は沿岸の警備と沖合の油田の防衛を任務としている。
石油・天然ガス部門がGDPのほぼ半分、輸出のほとんどを占めている。GDPは原油高の恩恵を受け、2006年度に5.1%を達成。インフレ率は1.2%、失業率4.0%と安定している。石油、天然ガスの輸出国は、日本、インドネシア、韓国など。
注目すべき点は、石油と天然ガスに依存する産業構造から脱皮するため、石油・天然ガスを原料としたメタノール事業と金融業の育成にオイルマネーを投資していることだ。中東産油国同様、将来の石油枯渇に備え、オイルマネーを金融業に注ごうとしている。アジアのイスラム金融は、マレーシアが拠点となっているが、同じイスラム国家として「金融センター」化しているマレーシアを強く意識しているのだろう。ブルネイの主要輸出国である日本は、イスラム金融システムで取引をしなくてはいけない時期がやがてくるかもしれない。
By Master K/益田 慶