FXライフ 54 東南アジアの通貨 シンガポールとタイ
マーライオンで有名なシンガポール。東京23区とほぼ同じ面積でありながら、アジアのハブ港であり、世界の金融センターでもある。シンガポールがその地位を築くことのできた背景には、アジアと欧州、中東を結ぶ交通の要所にあるため古くから東西貿易の拠点となって繁栄し、海運産業や航空産業が発達したこと、英語が公用語であることから多国籍企業のアジア地域の拠点となったことなどが挙げられる。
たとえば2005年のコンテナ取扱数の世界ベスト5は、シンガポール港、香港港、上海港、深セン港(中国)、プサン港(韓国)だが、シンガポール海事港湾庁のデータによると、コンテナ取扱量のみならず、寄港した船舶の総トン数と船舶燃料供給量もシンガポール港が世界一の規模を誇っているという。物流の拠点は、貿易の拠点だ。
通貨は、シンガポール・ドル(SGD)。2003年に消費税が4%から5%に上げられ、2007年には7%になった。GDPは8.7% (2004 年)、6.4%( 2005年)、 7.9%(2006年)と順調に推移している。失業率は2.6%と低い。日本同様、エレクトロニクスや化学関連機器、精密機械に強みがあり、運輸業、サービス業、金融業が発達している。
多国籍企業が進出しやすい環境に、シンガポールにとって特に有益な事業へ新規参入する企業に対する税制上の優遇措置がある。最初の生産開始日から5~10年間、全額租税免除というものだ。日系企業は2000社、在留邦人は約26000人。日本とは貿易面で利害が一致する点が多くあり、日本最初の地域貿易協定は、同国との間に結ばれた「日シンガポールEPA」だ。金融センターとしての発展にも目を見張るものがある。サブプライムローンで大きな損失を負ったスイスの銀行UBSに融資したのが、政府系ファンドの「シンガポール政府投資公社(GIC)」だ。GICの運用資産は3300億ドルある。
シンガポール同様、東南アジアにおける代表的な工業国がタイだ。通貨は、タイ・バーツ(THB)。1985 ~1995年の10年間、平均9%成長を記録したというから、かつての日本と似ている。しかし1997年に始まったアジア通貨危機で大きな経済的な打撃を受けた。この際に「1ドル=25バーツ」の固定相場を廃止したが、バーツが大幅に下落。一時は1ドル56バーツまで値下がりし、経済危機が発生した。タイはIMFや日本の支援を受け、経済再建に取り組んだ。またこれをきっかけに財閥支配の廃止、外国資本の受け入れを進め、2003年にはGDP6%まで回復。2007年度のGDPは4.8%、インフレ率2.3%、失業率1.5%と安定している。
1980年代以降、円高、賃金の安さに加え、国内市場の拡大に着目した日本をはじめ、欧米の企業が積極的にタイに進出。日本の自動車関連企業や家電メーカーが進出している。在留邦人は約40000人。コンピュータ、自動車部品、天然ゴムを米国、日本、中国などに輸出し、日本や中国から機械、化学製品を輸入。マレーシア、アラブ首長国連邦から原油を輸入している。
日本からすれば、タイはASEAN諸国(ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、ベトナム)への輸出拠点となっているため、タイに機械部品を供給し、タイで加工してベトナムに輸出するといった「三角貿易」も盛んに行われている。
2008年4月には、日本とASEAN10カ国との間で日本ASEAN包括的経済連携(AJCEP)が署名された。発効は未定だが、これによって日本の家電製品が関税をかけずにタイ国内に届けられることをタイでは期待しているという。
By Master K/益田 慶