世界資源戦争 39 原子力発電とクリーンエネルギー
原子力発電と太陽光発電、風力発電など自然エネルギーを燃料とする発電は、発電する際に温室効果ガスの排出が少ないという一点において共通している。温室効果ガスの排出量の多い発電方式は、1.石炭を燃料とする火力発電 2.石油を燃料とする火力発電 3.太陽光発電 4.風力発電 5.原子力発電の順だ。ただし、ウラン濃縮のための電力を加算すると原子力発電の排出量は多くなる。
日本もアメリカも原子力発電を推進する国だが、一方で温室効果ガスの排出量の少ないクリーンエネルギーの開発推進にも力を入れている。日本のクリーンエネルギー事業といえば、太陽光発電に欠かせない太陽電池の製造だ。しかし、国別の太陽光発電の累積導入量は、1位ドイツ、2位日本、3位アメリカといった順位となっている。ドイツは原発を放棄しており、風力発電も盛ん。
シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機といった太陽電池の製造メーカーは、国内需要より輸出に力を入れている。これは日本の制度の問題が大きくかかわっている。日本には、民間企業や個人が電力会社に売電する歴史が浅く、また売電事業で大きな利益が出ないしくみになっているからだ。ドイツの場合は、1991年に太陽光発電、風力発電などの買い取り制度によって投資を促す法律が施行されたことが、太陽光発電拡大の大きな要因となった。
一方、アメリカにおけるクリーンエネルギーといえば、原子力とバイオエタノールやバイオディーゼルなどバイオ燃料だ。しかし、ガソリンの代替燃料としてブッシュ大統領が事業を推進したバイオエタノールは、予想しなかった局面で「世界資源戦争」に首を突っ込むことになった。これは国策として進めているブラジルも同様である。
原油高騰によって負の連鎖が起こり、資源高、穀物高が発生した。サブプライムローンの焦げ付きにより、ファンドの投機マネーが穀物相場に流れた。また、近年の不作が重なり、バイオ燃料の原料となるサトウキビやトウモロコシ、小麦など穀物価格が高騰した。結果、日本ではこれらを原料とする食品、あるいは飼料とする畜産品が値上がりした。アメリカやブラジルでは、多くの農家がサトウキビやトウモロコシ、小麦などの作物に転作した結果、従来生産していた作物が不足し、バイオ燃料とは関係のない作物も高騰してしまった。
そもそも穀物の耕作面積は、急には増えない。現状の生産量の一部、あるいは大部分がバイオ燃料の原料用に使われたとすれば、つまり全体の生産量が同じで需要だけ伸びたのだとすれば、穀物の価格は上がって当然だ。バイオ燃料と農作物が競合状態となり、結果、穀物のみならず農作物全般が高騰することになる。ガソリンの代替燃料としてのバイオエタノール事業は、一方で他の産業と競合することになるということだ。
しかも他国で不作が続けば、世界の食用の穀物量は絶対的に不足し、社会問題に発展する。事実、2008年に入ってから、アフリカではコートジポワール、ブルキナファソ、セネガル、アジアではフィリピン、バングラディシュで資源高、穀物価格高騰を原因とする暴動やデモが発生している。
そして産業界が燃料を化石燃料から電力に切り替えるとすれば、どうなるか? 電力会社の株は上がるだろう。その際に原子力や太陽光発電による電力であれば、温室効果化ガスの排出量が少ないので、排出権を購入する必要はなくなる。反対に既存の自動車メーカーは、排出権を購入しなければいけなくなるので、同じ売上をキープしたとしても支出だけは増え続けることになる。世界資源戦争は、クリーンエネルギーという新たな局面にも発展している。
By Master K/益田 慶