世界資源戦争 38 世界で原発施設を売り歩く日本企業
原子力業界を牽引する三つのグループ、つまり1.東芝と米国ウエスチングハウス(WH) 2.三菱重工とアレバ(仏) 3.日立と米国ゼネラル・エレクトリック(GE)は、世界各国で原発施設の建設に動いている。東芝は米国を中心に原子炉建設の受注件数を増やしている。ライバルの三菱重工は、2007年2月テキサス州ダラス郊外のコマンチェピーク原発に増設される2基の受注が内定し、勢いをつけた。プラントは加圧水型軽水炉の最新型で、出力170万キロワットという大型の原子力発電所だ。日本企業が米国で原発を単独受注するのは初めてで、独自開発した原子炉の海外輸出としても最初のケースとなる。
さらに2008年2月、欧州の新規原子力発電プラント市場へ参入することが決まった。日本メーカーによる欧州の大型炉市場への参入はこれが初めて。そして2008年7月、三菱重工業とアレバの合弁会社であるATMEA社は、同社が開発を進めている新型第3世代原子炉「ATMEA1」の安全設計概念について、国際原子力機関(IAEA)による審査が完了したことを公表した。ATMEA1の基本設計は順調に進捗しており、許認可申請準備は2009年末までに完了する予定だ。ATMEA社は、新型原子炉ATMEA1の開発・販売を目的に三菱重工とアレバが2007年11月、パリに設立した合弁会社で、世界の中型原子炉市場で主導的なポジションを狙う。
欧州では地球温暖化防止や原油価格の高騰を背景に、原子力発電の再評価の機運が高まっており、2030年頃までに新設プラント数10基の需要が見込まれている。三菱重工は今後、欧州市場へ積極的な営業を続けていくという。
原発の市場規模なら中国が最大だと思いがちだが、中国では電力供給に占める原子力の割合が2030年までにわずか4%にしか達しない見通しだ。それでも、三菱重工業は2008年2月、中国山東省の山東核電有限公司から同省海陽に新たに建設される海陽原子力発電所向けのタービン発電機パッケージを受注。同原発は2015年までに運転を開始する計画だ。三菱重工業は2007年にも浙江省の三門原子力発電所で同様の設備を受注している。
経済成長を続けるインドはといえば、2050年まで原子力発電量を年率9%以上の割合で増加させる計画だ。インドは近年、慢性的な電力不足に陥っており、また原油の輸入大国にもなっている。
インド政府は、電力の需要急増に対応するため、現在9基の原子炉のほかに新たに原子力発電18基の建設を計画している。
インド原子力発電公社にアプローチしているのはアレバだ。フランス・サルコジ大統領自らトップセールスをかけ、アレバの受注を援護射撃している。
一方、2008年6月、ウラン生産最大手のカメコ(カナダ)と共同で提携すると発表した日立とGEは、2008年7月、原子炉の受注戦略を見直したことを明らかにした。両社は2007年に原子力事業を統合し、世界の電力会社に対して新型原子炉を売り込んでいた。しかし原子炉をめぐる受注競争が激化していることから、すでに稼働実績がある既存の原子炉を優先する戦略に転換したのだ。
日立-GEグループの既存の原子炉は、1997年から受注を開始し、GEと合わせた受注は8基(日本6基、中国2基)で、このうち4基がすでに稼働している。
日立-GEグループは戦略転換の第1弾として、両社の米合弁会社、日立GEニュークリア・エナジー(GEH)内に、改良型沸騰水型軽水炉を提案するための新組織を発足させ、受注活動に乗り出した。日立とGE は原子力事業で2015年に年間5000億円の売上高を目指している。
By Master K/益田 慶