世界資源戦争 37 日本、米国、フランス企業がしのぎを削る原子力事業
先に開かれた「洞爺湖サミット」でブッシュ大統領や仏サルコジ大統領がしきりに「地球温暖化対策には、温室効果化ガスを排出しない原子力発電が最適」と発言したので、原子力銘柄が勢いを増している。
現在、原子力業界は大きく三つのグループに分けられる。1.東芝と米国ウエスチングハウス(WH) 2.三菱重工とアレバ(仏) 3.日立と米国ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。すべてのグループに日本企業が名を連ねているのは偶然ではない。資源のない日本は、安い原料を輸入し、それを高い技術で加工して付加価値をつけ、海外に輸出することで外貨を得ている。
高度なスキルが必要な原子力事業は、太陽電池同様、日本企業が得意とする分野だ。海外の原子力メジャーと組んで、中国やインドなど新興国にプラントを販売する戦略は、半ば日本の国策ともいえよう。資源が乏しく、かつ世界屈指の資源消費国である日本が、「世界資源戦争」で生き抜くには、資源消費国に技術を販売するのが得策。その技術は様々な装置に形をかえ、エネルギー分野と環境分野で花開いている。
では、原子力業界の話を進めよう。2004年から始まった原油価格の高騰により火力発電に対する原子力発電の優位性が高まった。また、京都議定書で定められた各国の温室効果ガスの排出枠が、「1トン6ドル」といった金額に換算して排出権取引されるようになったことも大きく影響している。
温室効果ガスの排出枠を超過すると損益が生まれるのだから、化石燃料を燃やして温暖化を促進する火力発電所は立場がない。しかも売電事業で得た利益は排出権取引によって減ることになる。一方の原子力発電は、プラント建設の際に石油を使うものの、火力発電所と比べると、温室効果ガスの排出量が少ない発電施設だ。放射能もれのリスクはあるが、温暖化防止をプライオリティーとするなら、国や企業の大義名分も立つ。
東芝が英国核燃料会社(BNFL)の傘下にあったWHの全株式を取得したのは2006年のこと。買収額は約6000億円だった。WHは2006年時点、米国を含め世界34ケ所に技術・販売拠点を持ち、原発の建設実績は98基。従業員約9000人、売上高約18億ドル(約2100億円)だった。当時、その買収金額は「高い買い物」だと指摘された。三菱重工、GEを抑えて東芝が買収できた要因には、示金額のほか中国への原発ビジネスなどで東芝がWH経営陣の方針を尊重すると判断したことなどが挙げられた。
原子力ビジネスには、燃料となるウランの売買、発電所建設、売電ビジネスなどいくつかの側面がある。東芝はプラントメーカーとして実績がある。東京電力が運営する柏崎刈羽原子力発電所や、日本原子力発電が運営する敦賀発電所など約30施設にプラントを納品している。
2007年6月、東芝は初の海外での原発建設契約の内定にこぎつけた。米国電力大手NRGエナジーによる米テキサス州建設予定の原子力発電所建設だ。2015年に稼働予定。そして2008年3月、東芝はNRGエナジーの原子力発電プラント2基の主契約者に正式に選定されたと発表した。東芝は受注金額について明らかにしていないが、原発2基の建設にかかる事業費は8000億円規模とみられる。東芝はまた、NRGエナジーが2月に設立した改良型沸騰水型原子炉の事業開発会社に3米ドル(約300億円)、12%分を出資することも併せて発表。東芝は、今回受注した2基以外にも原子炉の受注獲得を狙っている。
米国はブッシュ政権が原子力発電推進に方向を転換したことで、原発建設申請が相次いでいる。米国市場が大きく成長することは明白で、米国でのシェアの半分を東芝・WHが取るのではないかといわれている。東芝にとってWHの買収額約6000億円は、今となっては「安い買い物だった」ということになる。
By Master K/益田 慶