世界資源戦争 36 資源メジャー側にまわる大手商社
大手商社が単独で海外の鉱山など資源開発に出資する先駆けとなったのが、住友商事のバツ・ヒジャウ鉱山(インドネシア)だ。住友商事は1996年に権益を取得したが、2001~2003年、銅価は低迷した。それでも、銅価はいずれ上昇すると判断し、権益を手放さなかった。この結果、現在では91億円の持ち分利益をもたらす事業に成長した。
伊藤忠商事が1994年代に権益を取得したアゼルバイジャンの油田は、2007年度に334億円の利益を同社にもたらした。アゼルバイジャンのカスピ海海域に位置するACG鉱区は、アゼリ油田、チラグ油田、グナシリ油田の3油田により構成される。可採埋蔵量は54億バレルだ。そのグナシリ油田深海部からの原油生産が2008年4月からスタートしたので、伊藤忠商事は次の決算で再び大きな利益を得るはずだ。さらに伊藤忠商事は2008年2月、メキシコ湾の油田の50%権益の取得に成功している。
もともと100%権益を持つ米中堅石油開発会社が単独で開発する予定だったが、サブプライム問題に伴う信用収縮の影響で資金調達が厳しくなり、伊藤忠に資金拠出の声がかかったのだ。日本の商社は、サブプライム問題で損失はあったが、副産物も多かったようだ。一方、丸紅は2008年4月、総額2000億円という、単独では同社最大となるチリの銅鉱山への投資に踏み切った。
世界経済は1970年代から2000年まで、ほぼ3%のペースで成長を続けてきたが、中国、インド、ブラジルなどの新興国が世界経済に組み込まれた結果、2002年から5%成長に加速した。これが世界の資源価格を押し上げた。日本の鉄鋼会社や銅精錬所、電力・ガス会社などへの原料供給を手掛けてきた大手商社は、資源価格が低迷していた90年代後半から、上昇し始めた2000年代初頭にかけて、少額出資から一歩踏み込み、リスクをとって大口の権益獲得に乗り出した。これが現在の好調な業績の土台となった。
いまや鉄鉱石の貿易に占める世界シェアでは、三井物産は約5%、三菱商事は石炭で15%と、BHPビリトン(オーストラリア)やリオ・ティント・グループ(英国、オーストラリア)などの世界の資源メジャーに比肩する存在となっている。
商社のたくましさは、タワシからミサイルまで、売れるとなればどんなアイテムでも輸出入することにあるが、資源価格の高騰で需要が拡大した鉱山開発向けの建設機械、タイヤや貨車、油田用の鋼管など、資源・エネルギーの周辺市場を取り込んだことも見逃せない。資源の開発と生産には、重機やパイプライン、道路などインフラ整備は欠かせない。日本の「コマツ」が製造する建設機械が海外で広く求められていることが、それを証明している。商社は新興国の経済成長をインフラ整備から支え、売上を積み重ねているのだ。
発電所、鉄道、水処理設備など、2002年以降、日本からのプラント輸出は毎年2兆円を超える水準で推移している。大手商社6社の機械部門の純利益は2004年3月期に1000億円に満たなかったが、2008年3月期には約2400億円にまで拡大した。4年間で2.4倍にもふくれあがったのだ。特に北京オリンピックを控えた中国向けの輸出は大きい。
商社の事業投資も軌道に乗り始めている。丸紅は1990年代に入って発電事業そのものに参入。現在では世界各国で持ち分発電量6600メガワットの発電事業を運営。民間の独立発電事業体では世界4位の規模となり、2008年3月期は純利益110億円を稼ぎ出した。
石炭や石油のように枯渇資源でなく、再生可能なエネルギー。すなわち、風力や太陽光を利用した自然エネルギーによる電力事業や原子力事業に参入するプラントメーカーも登場している。資源高でもうけた商社は、次にエネルギー産業に進出しようとしているのだ。
By Master K/益田 慶