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世界資源戦争 35 資源高で高収益の大手商社

2008年7月15日、燃料高騰にあえぐ日本全国の漁師たちが「スト」に打って出た。漁船の燃料の重油が3年間で3倍近く高騰したことで、「出漁すれば赤字」という状態が続き、各地の漁業者からは「廃業してしまうしかない」と抗議の声があがっている。しかし、その一方で、資源高の恩恵をこうむり、売上が急増している業界がある。資源会社と資源を輸出入する商社だ。


2008年3月期決算で、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商など大手6社がそろって最高益を更新した。権益を持つ資源価格がまんべんなく大きく値上がりしたからだ。大手6社そろっての最高益更新は3年連続。6社合計の当期利益は、4年前の約2200億円から約7倍の1兆5千億円まではね上がった。この4年間で、売上でなく、利益が7倍も増えた業界は少ないだろう。


たとえば三菱商事は海外に鉄鋼原料用石炭(原料炭の)権益、三井物産は鉄鉱石の権益を所有している。原料炭と鉄鉱石をめぐる鉄鋼会社との価格交渉が、ここ数年いずれも大幅な値上げで妥結し、利益を上乗せしてきたのだ。商社は世界のシンクタンクやアナリストを通じて、資源が高騰することを知っていたのではないか。そう疑いたくなる理由は、資源価格の高騰が始まる前に、各商社が鉱山や油田の権益に手を打ってきたからだ。


2007年3月期決算で、三菱商事に1081億円の持ち分利益をもたらしたオーストラリアの鉄鋼原料用石炭事業は、2001年にオーストラリアの資源メジャーBHPビリトンから約1000億円で権益を取得したものだ。そのBHPビリトンは2007年まで4年連続で史上最高益を更新中だ。鉄鉱石や原料炭の価格は1970年代から80年代にかけて長期間低迷し、90年代には鉱山会社の再編が相次いだ。三菱商事は割安なうちに資源の川上に権益を取得する「川上投資」に打って出たのだ。


三井物産も「川上投資」に成功した。2003年に、ブラジルに本社を構える世界最大の鉄鉱石生産会社「コンパニア・バーレ・ド・リオドセ」(現ヴァーレ)へ15%の間接出資をしたのが今になって非常に効いている。国営企業だった「リオドセ」は1997年に民営化されたが、持ち株会社である「バレパール」(ブラジル)の大株主だった現地の投資銀行は2003年、長く低迷する鉄鉱石価格に嫌気が差し、保有する「バレパール」株15%の売却を三井物産に打診した。同社が1000億円規模のバレパール株取得に踏み切ったのは、鉄鉱石の権益を取得できる、願ってもない機会だったからだ。


当時のリオドセの純利益は6億ドル、約630億円程度。これが5年間で今や約1兆500億円を超える優良企業に成長した。株価も順調に推移しており、2007年末の株式時価総額は約17兆円で、これはトヨタ自動車と肩を並べる規模だ。日本の最大手「新日本製鉄」や韓国最大の鉄鋼メーカー「ポスコ」は、このヴァーレから鉄鉱石を購入している。2008年の鉄鉱石価格は2007年と比べ65%引き上げられた。それでも合意せざるを得ないのは、鉄鉱石は売り手市場だからだ。そして2008年6月、ヴァーレの株式増資に対し、三井物産は追加出資を決定した。拠出金額は約750億円の見込み。それほどの出資をしても十分"元が取れる"ということを物語っている。


資源高に苦しめられる業界のその隣で、資源メジャーと商社は我が代の春を謳歌している。これが「世界資源戦争」の実態である。

By Master K/益田 慶