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世界資源戦争 33 地球温暖化と原子力銘柄の相関関係

原油価格の高騰と同時に地球温暖化対策の急務が叫ばれるようになった頃、原子力発電を見直すトレンドが浮上した。化石燃料を燃やす火力発電と比べ、CO2を排出しない原子力発電はエコロジカルだという展開になったのだ。口火を切ったのは、電力のほぼ100%を原発でまかない、隣国に電力を販売してきたフランスだ。「CO2を排出しない地球に変えよう。京都議定書を順守しよう」という政治的なメッセージは、原発を推進するフランスの経済的なメリットを見越したしたたかな戦略である。そしていま、原発事業がCO2削減と利益追求を同時にできる有力なビジネスであると判断した投資家が動いたからだろう、2007年から原子力銘柄がブームとなっている。


原子力産業のすそ野は広い。川上に位置するのがウラン鉱山会社だ。原子力発電コストに占めるウラン価格の割合は2~3%と小さかったが、2003年以降、ウラン価格が高騰。今後原発建設が加速すればさらに上昇し、発電コストにも大きく影響するだろう。増える需要をまかなうには新規鉱山開発が欠かせない。資源量は十分あっても、生産段階まで持っていくには5~10年かかるため、莫大な資金が必要だ。供給が追いつかなければ、ウラン価格は跳ね上がる。


ウランは金や石油、小麦のように取引市場が国際的に広がっていない。原子力発電所のある国が限定されているため、生産国との直接交渉がほとんどだ。世界の天然ウラン生産量の多い順をあげると、カナダ(26%)、オーストラリア(20%)、カザフスタン(14%)、ニジェール(9%)となる。


ロシアのチェルノブイリと米国スリーマイル島の原発事故のマイナスイメージから2000年以降、閉山する鉱山や廃業する原子力関連企業が相次ぎ、生産会社は淘汰された。その結果、現在はカメコ(カナダ)、アレヴァ(フランス)、多国籍グループのリオ・ティント(英国、オーストラリア)、カザトムプロム(カザフスタン)、TVEL(ロシア)など、わずか数社が世界のウラン生産と価格をコントロールしている。


カナダの「カメコ」はカナダ、アメリカでウランを採掘する世界最大手。近年ではウラン生産国カザフスタンにも進出し、国有原子力企業カザトムプロム社と組み、ウラン転換の新しい有限責任事業組合となる「ウルバ転換LLP」を設立した。日本の主なウラン調達先はオーストラリア、カナダ、アフリカのナミビアやニジェールなどだが、近年は官民一体となって、カザフスタンに急接近し、ウランをはじめとする原子力分野の協力関係を強化している。日本の電力会社(東京、中部、東北、九州)と東芝、丸紅は、カザトムプロム社やカナダのウラン鉱山開発会社と協力してカザフスタンのハラサン鉱山の新規開発・生産・ウラン販売をするプロジェクトに参画。2014年からフル生産を始める。約40年は生産できるという。


フランスの「アレヴァ」は、ウラン採掘のみならず、プラント建設、発電供給まで行なう原子力産業複合企業。フランスの原子力政策の転換によって誕生した持株会社だ。傘下に原子炉メーカー「アレヴァNP」、原料の調達と原子炉に燃料供給を行なう「アレヴァNC」、発電機供給と送電設備を担う「アレヴァT&D」などがある。アレヴァNPはドイツ・シーメンス社の原子力部門を買収して誕生した経緯から、66%の株式をアレヴァが、34%の株式をシーメンス社が保有している。


原発建設を凍結したドイツだが、ドイツを代表するシーメンス社は原子力産業最大手の大株主なのである。アレヴァNPは、フランス、ドイツ以外に中国での受注実績がある。三菱重工業の提携先としても知られている。またアレヴァNCは、カナダ、オーストラリア、カザフスタン、ナイジェリアにウラン採掘の権益を保有している。


フランスは、このアレヴァ・グループを全面的に支援するために「CO2を排出しない産業構造に転換しよう」というメッセージを世界に発したということだ。つまり国益を守るために「地球温暖化防止」に参加しているのである。

By Master K/益田 慶