世界資源戦争 32 レアメタル市場
レアメタルとは希少金属のことだ。プラチナ、ニッケル、クロム、コバルト、タングステン、マンガンなどが代表格で、鉄や銅、亜鉛、アルミニウムなどと異なり、天然に存在する量が少なく、生産量は限られている。これらレアメタルも2004年以降、急騰した。
プラチナの生産国の代表が、世界第1位の南アフリカと第2位のロシア。ともに資源によって潤っている国だ。プラチナは供給量が限られているうえ、自動車触媒、磁気記録媒体、液晶パネルなどハイテク産業用の需要増が見込まれている。日本はこれを輸入し、自動車やデジタル家電、産業機械の素材として大量に使用している。プラチナ消費大国だ。
ニッケルは、ニッケル鉱石として生産量され、地金に加工されて材料として使われる。主要鉱石生産国は、ロシア、カナダ、オーストラリア、インドネシア、ニューカレドニアだ。世界のニッケル地金生産量国は、ロシア、カナダ、日本、中国、オーストラリア。 世界のニッケル主要消費国は、中国、日本、米国、ドイツ、韓国だ。ニッケルは、中国・インド等の経済成長を主要因とする世界的な需要の拡大により2003年後半から価格が上昇に向い、特に2006年に入って価格が急騰した。
2006年に平均価格はトンあたり24,286ドルで、2001年平均価格と比べ4倍を超えた。2008年5月には、1トンあたり54,000ドルという過去最高値を記録。2007年1月と比べ3.5倍にも跳ね上がった。軒並み値上がりしているレアメタルのなかでも高騰率は著しい。ニッケルの主用途は、高級鋼材であるステンレス用。じつは中国のステンレス生産も5年間で5倍に急増している。ステンレスはで完全な先進国型商品とされており、中国の需要急増から国民の生活が向上していることがうかがえる。
クロムはクロム鉱石として採掘される。主要な生産国は、南アフリカ、 インド、カザフスタン、ジンバブエ、フィンランドなどだ。世界の生産量の 40 %以上を占める南アフリカの存在が圧倒的に大きく、レアメタル大国南アフリカは輸出で潤っている。クロムは「クロムメッキ」で知られるように、耐食性が高く、サビないことから、車両、機械、流し台、包丁などに用いられる。日本では産業上重要度が高いレアメタルのひとつだ。相場では、興味深い現象が起こっている。これまでステンレスの価格動向はニッケルの価格に左右されてきたが、2007年末からクロムの価格の高騰によりベース価格そのものが高騰しているのだ。つまり原料の値段が上がったので、ステンレスの値段も高騰しているのである。
タングステンは、膨張しにくく、硬質なのに容易に細い線に加工できることから、昔から電球のフィラメントに使われてきた。近年では鉄鉱石に混ぜて強度を上げ、金型や切削工具材料をつくる際に使用されている。本来、宝石、アクセサリーなどの高級ジュエリーに使われている金属で、やはり価格は高騰している。コバルトは超合金材に、マンガンは、乾電池に使われることで知られている。このほかにレアアース、カドミウム、インジウム、タリウム、シリコン、チタンなどレアメタルと呼ばれる金属は31種ある。
日本は、レアメタルを大量に輸入し、それを使って自動車や産業機械を製造し、輸出してきた国。不足した場合、日本経済の「アキレス腱」になりかねない。特定の素材だけは、民間と国が年間消費量の60日分を備蓄してきたとされている。はたして60日分でいいのか。日本の製造業の息の根を止めるには、レアメタルの不足が一番だ。そして価格が高騰し続ければ、危険信号が点滅する。素材の高騰分は製品に上乗せされる。技術は申し分なくても、価格競争では世界の競合に負ける可能性は高い。
By Master K/益田 慶