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世界資源戦争 30 金属資源高騰の背景 中国が牽引する鉄鉱石市場

これまで石油の開発の歴史、OPEC諸国とメジャーの動向、資源ナショナリズムの影響による新興国の国営企業の発展などを見てきたが、「資源戦争」は石油や天然ガスだけに留まらない。近年、高騰している資源は原油だけではないことに注目してもらいたい。たとえば1980年代から2000年初めまで、トンあたり30ドル前後で推移していた鉄鉱石の国際価格もまた、2004年に突如37.9ドルに上昇、2008年2月には80ドル弱にまで高騰している。


鉄鉱石や石炭、銅、アルミなどはどれも原材料資源で、鉄鉱石は鉄鋼製品の原材料である。その鉄鉱石の国際価格が急に高騰したとは、いったいどういった世界情勢なのか。


世界の鉄鉱石市場の供給側のメンバーはほぼ固定している。鉄鉱石生産国ベスト5は、中国、ブラジル、オーストラリア、インド、ロシアだ。この5ヶ国が世界の鉄鉱石の生産の約7割を占めている。これに対して需要側のメンバーは大きく入れ替わっている。かつては米国、日本、欧州が主なプレーヤーだったが、近年、中国、日本、韓国の3ヶ国が世界の鉄鉱石輸入量の過半数を占めているのだ。中国は鉄鉱石の最大の生産国で最大の輸入国、加えて最大の消費国に急成長した。自動車やビル、家電向けの中国需要が急膨張した結果、鉄鉱石の国際価格は急騰し、2003年30%、2004年80%、2005年71・5%と驚くほどの値上がりを記録したのである。こうして中国が現在、鉄鉱石市場の価格を左右する最大のプレーヤーとなっている。


かつて鉄鉱石の国際価格は、3大メジャーと呼ばれるヴァーレ(ブラジル)、BHPビリトン(英/豪)、リオティント(英)と、世界の主要鉄鋼メーカーであるアルセロール・ミッタル(ルクセンブルグ)、コーラス(英/オランダ)、ティッセン(ドイツ)、これに日本の企業グループ(新日本製鐵、JFEグループ)が加わり、相談して決定していた。日本の企業グループは、オーストラリアと中国を供給拠点とするBHPビリトンとリオティントと交渉してきた。ここ数年はメジャーと鉄鋼メーカーが個別に価格交渉を行ない、早く合意に至った価格が翌年の価格の標準となっていた。


ところが、需要側に中国・宝鋼グループ、韓国・ポスコが加わり、発言力を増すようになってきた。2000年以降、鉄鉱石の生産量は右肩上がりで増加を続けている。ご存知のように、世界の製造メーカーは安い人件費、安い生産コストを求めて生産拠点を次々と中国に移した。さらに2008年の「北京オリンピック」、2010年の「上海万博」など国家プロジェクトが続いている。中国はこの需要に追いつかなくなり、鉄鉱石を外国から輸入せざるを得なくなったのだ。現在、世界の鉄鉱石輸入量の約40%を中国が占めている。つまり、鉄鉱石の生産が中国の鋼材需要に追いつかなくなったことから鉄鉱石の価格が上がり、最も多くの鉄鉱石を消費する中国企業が国際価格決定権を握ったということだ。


2008年2月、新日本製鐵やJFEスチールなど鉄鋼大手各社は鉄鋼原料として仕入れる2008年度の鉄鉱石について、供給元の資源最大手ヴァーレと前年度比65%の値上げで合意した。1トン当たりの価格は80ドル弱となり、2007年度と比べ約30ドル上昇。鉄鉱石の値上げは6年連続だ。これは日本企業が招いたものでなく、中国の影響である。ちなみに鉄鉱石値上げによる国内鉄鋼メーカーの年間コスト負担増は年間約5000億円。


これで自動車や家電メーカーなどへの大幅な価格転嫁要請の機運が高まることは避けられないだろう。あるいは値上げを見送り、現在以上のコストダウンを試みるかもしれない。その場合、下請けにシワ寄せが集まる。鉄鋼大手各社と鉄を素材に製品をつくるメーカーは、厳しい状況に立たされる。


このように鉄鉱石市場をチェックしてみると、各国の経済動向や企業の思惑、悪戦苦闘ぶりが見えてくる。これも「資源戦争」のまぎれもない側面である。


By Master K/益田 慶