2008年6月8日 今週の為替戦略
先週の動きは:
週初は、英住宅金融大手ブラッドフォード・アンド・ビングレーの金融不安から始まり、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズ、モルガン・スタンレーの格下げに、ポンドやドルは弱く、ユーロは堅調に推移した。
なんといっても驚きは、バーナンキFRB議長による国際通貨会議での発言で、①米政策金利は物価圧力と成長へのリスクに対処する上でよい位置にある→ 現行の金融政策を容認、金利引き下げの終了を示唆する一方、②ドル安によりインフレリスクが高まっていると異例の警告。FRB議長が為替について直接発言した稀なケースでドル買いとなった。
次は、トルシェECB総裁の、理事会後の記者会見で、7月3日の理事会で利上げの可能性があると発言、多数が直に利上げを支持したことが判明、頭を冷やす意味で今回は利上げが見送られたものの、7月の利上げは避けられないとの判断から、欧州金利は上昇、ユーロ高の流れとなった。
ユーロの買い材料に対してGBPは分が悪い。英住宅金融会社大手ブラッドフォード・アンド・ビングレー(B&B)のCEO辞任や急な増資計画に金融不安が再燃、英ハリファックス・HIBOSの住宅価格は悪く、製造業受注も悪く、サービス業PMIも悪く、これでもGBPUSDは1.97台でドル安の流れに健闘している。
豪州中銀とNZ中銀も対象的な内容となった。ラッド豪首相が過去16年で最高の水準にある同国のインフレとの戦いは長期戦になると発言、ボラードNZ中銀総裁は年内に利下げする可能性を示唆、AUDNZDは1.2160→1.2562まで急騰、AUD高、NZ安の流れとなり、AUDJPYは高値を更新している。
そして、米失業率は5.5%と前回5.0%から大幅上昇、非農業部門雇用者数は-4.9万と予想を若干下回ったが、前回が-4.9万人←-2.0万人に大幅にマイナス幅が拡大し、ドルは大きく値を下げ、原油価格は38.54ドルまで上昇、150ドル台が視野に入り、NYダウは12209.81と前週終値比-394.64ドルまで下げ、ドル売りが続いた。
今週の相場展開
先週の出来事と経済指標を抜きにして考え難く、通貨間でも流れが変わる可能性がある。
ドルと、他通貨の基本的な考え方は、ドル安をどこまで押さえることができるかが焦点になっている。バーナンキFRB議長が米財務長官と共に、為替政策を担当することを暗に表明し、金利の緩和政策の終了と、原油や商品価格の上昇がドル安の一因であるとの指摘は多く、事実上のドル安政策の見直しが始まるのかが注目され、米失業率の上昇に出鼻をくじかれたものの、この点からはドルにとってはフォローの風が吹いている。しかし、ドル全面高の可能性も低く、通貨間で歪な動きになりそうである。
ユーロは、ECB理事会で利上げが決定される直前の状態となっていたことが判明、次回の理事会では利上げの可能性が高いことを示唆した。メルシュ・ルクセンブルク中銀総裁は、ECBの利上げ見送りは市場の混乱回避が狙いと発言、ドイツ連銀は2008年のインフレ率を3.0%(前回2.3%)とし、ウェーバー・ドイツ連銀総裁は7月の利上げを示唆したとことで、ユーロの買いがどこまで続くのか、これが今週のテーマにっなっている。一方、ポンドは、英住宅金融大手B&B社の不穏な動きが表面化し、英不動産業界の低迷に潜在的な利下げ期待が続いている。ユーロ・ポンド間の金利者は1%ポンドに分があるが、この金利下げ縮小に向かう可能性が高いことから、調整が進んでいたEURGBPも再び上昇する可能性が高くなっている。
豪中銀、NZ中銀とも政策金利の据置きを決定したが、豪中銀は7.25%の金利を長期間据え置く可能性が高く、状況によっては利上げの可能性も残っているが、一方のNZ中銀は年内に利下げをする可能性を残し、AUDNZDが調整局面を向かえた直後の急騰だけに、この余波は当面続きそうで、AUDNZD買いの流れが続きそうである。
また、カナダ中銀は政策金利0.25%引き下げが予想され、米国の利下げ終了の思惑に、USDCADは最近のレンジでもある、0.97~1.03の上限を上抜けできるのか注目したい。また、AUDCADは0.9822まで上昇、2005年の高値0.9854が直前に迫り、これを確実に上抜けすると大相場になりそうである。
ドルスイスは、ジョルダン・スイス中銀理事が、物価安定に関しても極めて警戒する必要があると発言、利上げの思惑と、キャリートレードの巻き戻しが強く、5月23日の安値1.0216を割込み終了したことで、ドル売りの流れをリードし、1.0のパリティの可能性が出始めている。
Weeklyベースの比較で、終値を比較してみると、
主要通貨では:
USDCADは以外ではあるが、今週の利下げの思惑に最大となる2.62%上昇し、ドル買いの主役となり、利下げの思惑に、NZDUSDは-1.94%下落、GBPUSDは-0.57%と下落している。USDCHFは-2.28%と利上げの可能性と、キャリートレードの巻き戻しに下落、ドル売りの主役となり、EURUSDも1.43%上昇、通貨間で大きな隔たりがでている。
USDJPY OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 103.26 105.88 103.12 105.52 2.14 2.07% 2.76 2.67%
06-Jun-08 105.11 106.44 103.87 104.94 -0.58 -0.55% 2.57 2.44%
EURUSD OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 1.5766 1.5819 1.5461 1.5554 -2.08 -1.32% 3.58 2.27%
06-Jun-08 1.5569 1.5779 1.5365 1.5776 2.22 1.43% 4.14 2.66%
USDCHF OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 1.0243 1.0528 1.0224 1.0423 1.83 1.79% 3.04 2.97%
06-Jun-08 1.0412 1.0524 1.0184 1.0185 -2.38 -2.28% 3.40 3.26%
GBPUSD OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 1.9794 1.9845 1.9675 1.9822 0.29 0.15% 1.70 0.86%
06-Jun-08 1.9731 1.9774 1.9462 1.9709 -1.13 -0.57% 3.12 1.57%
AUDUSD OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 0.9592 0.9636 0.9511 0.9557 -0.32 -0.33% 1.25 1.30%
06-Jun-08 0.9543 0.9640 0.9486 0.9625 0.68 0.71% 1.54 1.61%
USDCAD OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 0.9887 0.9978 0.9824 0.9933 0.36 0.36% 1.54 1.56%
06-Jun-08 0.9949 1.0219 0.9927 1.0193 2.60 2.62% 2.92 2.94%
NZDUSD OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 0.7856 0.7922 0.7768 0.7828 -0.18 -0.23% 1.54 1.96%
06-Jun-08 0.7828 0.7891 0.7614 0.7676 -1.52 -1.94% 2.77 3.54%
クロスでは:
円は、CADJPYは-3.11%と大幅な円高になり、NZDJPYは-2.51%、GBPJPYは-1.13%と円高が進んだ。一方、CHFJPYは1.74%の円安、EURJPYは0.88%の円安とまり、完全に二分されている。ユーロは、EURGBPで1.48%のユーロ高、EURCHFで-0.41%のユーロ安となり、こちらも二分され、スイス高が目立つ。
EURJPY OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 162.82 164.48 162.72 164.11 1.18 0.72% 1.76 1.08%
06-Jun-08 163.64 166.17 161.74 165.56 1.45 0.88% 4.43 2.70%
GBPJPY OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 204.39 209.35 204.23 209.12 4.49 2.19% 5.12 2.50%
06-Jun-08 207.40 208.35 203.96 206.75 -2.37 -1.13% 4.39 2.10%
CHFJPY OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 100.79 101.32 100.20 101.21 0.29 0.29% 1.12 1.11%
06-Jun-08 100.94 103.12 100.27 102.97 1.76 1.74% 2.85 2.82%
AUDJPY OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 99.05 101.06 98.93 100.84 1.71 1.73% 2.13 2.15%
06-Jun-08 100.32 102.01 99.26 100.98 0.14 0.14% 2.75 2.73%
NZDJPY OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 81.12 82.74 80.89 82.56 1.45 1.79% 1.85 2.28%
06-Jun-08 82.28 82.66 80.41 80.49 -2.07 -2.51% 2.25 2.73%
CADJPY OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 104.39 107.10 104.12 106.18 1.77 1.70% 2.98 2.85%
06-Jun-08 105.62 106.09 102.86 102.88 -3.30 -3.11% 3.23 3.04%
EURGBP OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 0.7963 0.7983 0.7832 0.7845 -1.16 -1.46% 1.51 1.90%
06-Jun-08 0.7968 0.8034 0.7926 0.7961 1.16 1.48% 1.08 1.38%
EURCHF OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 1.6153 1.6300 1.6147 1.6209 0.67 0.42% 1.53 0.95%
06-Jun-08 1.6312 1.6377 1.6142 1.6142 -0.67 -0.41% 2.35 1.45%
株価
日経平均株価 OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 13,875.98 14,366.63 13,665.57 14,338.54 326.34 2.33% 701.06 5.00%
06-Jun-08 14,294.52 14,343.19 13,658.02 14,012.20 -326.34 -2.28% 685.17 4.78%
ダウ工業株30種平均 OPN HI LW CLS 前週比 % 週レンジ %
30-May-08 12,620.90 12,726.50 12,442.59 12,638.32 158.69 1.27% 283.91 2.27%
06-Jun-08 12,985.41 13,136.69 12,460.09 12,479.63 -158.69 -1.26% 676.60 5.35%
IMM通貨先物:
公表された3日までは、バーナンキFRB議長のドル安によりインフレリスクが高まっていると発言、ドル買いが強まった時でもあり、ユーロショートが脹らんでいた。JPY、CAD、AUDのロングが減少、CHFのショートは減少、NZDのロングだけが増加している。しかし、ECB理事会後のトルシェECB総裁の記者会見によるEUR買いや米失業率の上昇も、折り込まれていないので、それを前提とし見る必要がある。
JPY Long Short Net
27-May-08 62,907 29,603 33,304
03-Jun-08 55,009 31,644 23,365
EUR Long Short Net
27-May-08 64,503 67,893 -3,390
03-Jun-08 55,845 70,299 -14,454
GBP Long Short Net
27-May-08 22,471 47,359 -24,888
03-Jun-08 18,580 47,608 -29,028
CHF Long Short Net
27-May-08 18,907 28,756 -9,849
03-Jun-08 14,128 21,399 -7,271
CAD Long Short Net
27-May-08 69,636 19,511 50,125
03-Jun-08 63,825 18,087 45,738
AUD Long Short Net
27-May-08 67,200 9,908 57,292
03-Jun-08 63,673 10,366 53,307
NZD Long Short Net
27-May-08 12,903 7,939 4,964
03-Jun-08 13,965 7,637 6,328
経済指標・その他では、9日には再びトルシェECB総裁やバーナンキFRB議長の発言が予定され、週初の為替相場に影響を与えそうである。また、経済指標では拡大し続けるインフレ懸念に、独・米の消費者物価指数が注目されている。
また、カナダ中銀は0.25%に金利引き下げが予想され、南ア中銀は0.5%~1.0%の金利引き上げが予想され、日銀は相変わらずの金利据え置きにほぼ間違いない。
◎インフレ関連では、9日=英PPI、10日=独PPI、スウェーデンCPI、ノルウェーCPI、11日=日本企業物価指数、12日=米輸入物価指数、13日=独CPI、米CPIと、多くの指標が発表される。
◎住宅関連では、9日=カナダ住宅着工件数、米中古住宅販売保留、10日=英住宅価格調査、豪住宅ファイナンス、11日=カナダ新築住宅価格指数が注目される。
◎雇用関連では、9日=スイス失業率、11日=英失業率、12日=豪雇用統計が発表される。
◎景気動向関連では、10日=英小売売上高、米小売売上高、NZ小売売上高、13日=ミシガン大学消費者信頼感指数が発表され、値動きが心配される。
◎成長関連では、11日=日本GDPが予定されている。
◎貿易関連では、9日=独貿易収支、10日=カナダ貿易収支、米貿易収支、11日=日本貿易収支、英貿易収支が予定されている。
◎政策金利では、10日=カナダ中銀金融政策発表、12日=南ア中銀金融政策発表、13日=日銀金融政策発表には注意が必要。
◎その他、11日=米地区連銀経済報告は注意したい。
●ドル円
ドル円は、徐々に底値を切上げ106.44円まで上昇したが、前週の終値より値を下げ、ローソク足では始値・終値がほぼ同じで上髭・下髭の長い相場となった。ドルスイスの下落の影響なのかドル円も上値は重く、クロスでも円は売りと買いが混在し、方向性が定まらない。市場参加者の期待感は、バーナンキFRB議長の発言を受け、108円までのドル高なのであろうが、ユーロやスイスの値動きからどうも不安になる。
ドル円のWeeklyチャートは、下降ラインの上限で取引され、買いの流れが続いている。上値のポイントは、106.58円、106.98円、108.04円、108.60円。下値のポイントは、104.22円、103.68円、102.53円、100.65円。RSIは38と引き続き50を割込み横ばいが続き、トレンドモメンタムは買いを継続している。Monthlyチャートは、ドル買い戻しが入り3ヶ月目となったが上値も重くなり、RSIは30とやや弱く横ばいで、トレンドモメンタムは売りを継続している。Dailyチャートは、レンジ相場から弱い上昇トレンドに変わり、RSIは48と50を割込み下降ラインが続き、トレンドモメンタムは買いを継続。トータルの判断は、102.53円~106.58円、または、103.68円~108.60円。
●ユーロドル
ユーロドルは、トルシェECB総裁発言が影響し、利上げの思惑に買いが続くことが予想される。目先は1.5800~20の壁が厚く上昇を妨げているが、材料からはユーロ買いが強く上値を試し、1.5820を超えくればしめたもので、再び1.6の大台が見えてくる。しかし、1.58台のトライが失敗すると、米ドル高政策への実質的な変更の期待が表に出、1.53台までの急落へ結びつく可能性が高く、買いから売りへの変更に躊躇しないようにしたい。
ユーロドルのWeeklyチャートは、1.5283~1.6017のレンジに入っている。上値のポイントは、1.5829、1.6008~17、1.6339、1.6453。下値のポイントは、1.5500、1.5387、1.5283、1.5075、1.4997~02。RSIは64と横ばいで、トレンドモメンタムは買いを継続しているが、指数は徐々に低下。Monthlyチャートは、上昇トレンドが続き、ラインの中間から上限で取引が続き、RSIは80とピークから値を下げ、トレンドモメンタムは買いを継続している。Dailyチャートは、1.5340~1.5863のレンジに入り上限を試し、RSIは59と50を上回り、トレンドモメンタムは売り継続しているが指数は上昇傾向に入っている。トータルの判断は、1.5500~1.6017レンジ相場の上値を試すことを予想。
●ポンド円
ポンド円は、材料からは、将来の利下げ期待と、住宅価格の大幅低下から英金融不安が終了していないとの事実に、ポンドの売り材料が多いが、円クロスで強弱が混在するなかで、値動きは逆に、徐々に底堅い推移となっている。ポンド売りの材料にも、円も弱く、ポンド円の売り反応は鈍く、結果として買い、売りともに決めてが弱い。202円~210円のレンジを抜け出すまではレンジ相場だけを考えたい。
ポンド円のWeeklyチャートは、徐々に底値を切り上げ210円を上限いに上値が抑えれている。上値のポイントは、209.09円、210.13円、213.70円、214.01円、214.90円。下値のポイントは、205.61円、204.75円、204.60円、203.07円、200.62円、198.44円。RSIは38と緩やかに上昇が続き、トレンドモメンタムは買い。Monthlyチャートは、198.44~210.13円のレンジに入り、RSIは49と横ばいで、トレンドモメンタムは売りを継続。Dailyチャートは、203~210のレンジに入り、RSIは48と横ばいで、トレンドモメンタムは買いを継続。トータルの判断は、203.07円~210円のレンジを予想。