世界資源戦争 26 新興産油国・石油企業の躍進 オイルサンドに活路を見出すカナダ
「世界資源戦争」では、まだカナダの地下資源を紹介していなかったが、同国に地下資源が少ないからではない。カナダは石油の生産量が世界第7位、天然ガスの生産量は世界第3位の大国である。ただし、どちらも埋蔵量が少ないと見なされてきた。つまり、枯渇しているということだった。しかし、ここ数年で認識は一変した。カナダでは近年、アルバータ州に分布する「オイルサンド鉱床」から莫大な量の原油が抽出されており、世界中から注目を集めているのだ。
オイルサンドとは、粘性の高い鉱物油分を含む砂岩のこと。超重量の原油がしみ込んだサンド(砂)や岩でできた地層だと考えるとわかりやすい。オイルサンド鉱床から原油を抽出する方式は、二つに大別できる。ひとつは、表土をはがしてオイルサンドものものを搬出して、加熱して石油を抽出する方法。これが従来の「鉱山方式」と呼ばれるものだ。もうひとつは、蒸気を水平の井戸に送り込み、数メートル下に平行に掘られた井戸から生産する方法。こちらは「SAGD法」と呼ばれ、近年大きな効果をあげていることから主流になりつつあるのだ。
オイルサンドが注目を集めている理由は、将来いずれ枯渇するはずの原油に代わる石油燃料資源だからだ。従来は、オイルサンドから1バレルの原油を得るのに数トンの砂岩を採掘し、乾燥させる必要があり、また大量の産業廃棄物を発生させていたことから、採掘と抽出、産廃に莫大なコストがかかった。そこで長い間、不採算資源として放置されてきたのだ。
しかし、前出した「SAGD法」が従来の方法よりローコストで運営でき、かつ2004年から始まった原油価格の高騰により、利益が見込めるようになってきたことで状況は一変した。莫大な利益が得られるとわかると、世界の投資家はすぐに動く。オイルサンド鉱床の埋蔵地や発掘権の買収に多額の投機マネーが集まる。だからカナダのアルバータ州に広がるオイルサンド鉱床が、世界中から注目されるようになったというわけだ。
オイルサンド鉱床の価値を数百倍、数千倍まで引き上げようとする投資家が、子飼いのアナリストやジャーナリストを使って、石油はあと数十年で枯渇するという「ピーク・オイル論」を世界中にどんどん流している、という説もある。あくまでも業界通の情報だが、おそらくは本当だろう。
それでは、オイルサンドに活路を見出すカナダの現状を見ていこう。アルバータ州のオイルサンドには、1兆7000億バレルの重油の一種が含まれており、そのうちの1740億バレルは現在の技術によって抽出が可能だとされている。すでに同州の原油総生産量の58%はサンドオイルから抽出されたものだ。オイルサンドからの原油生産が加速すれば、アルバータ州の生産量は2010年までにカナダ全体の50%、北米の10%を占めると予測されている。こういう好条件があり、カナダのオイルサンドを買収しようという動きが活発になってきたので。
2005年以降の主な買収や提携を挙げておこう。2005年4月、中国海洋石油公司(CNOOC)が、カナダのMEGエナジーの16.69%の株式を取得。CNOOCは株式取得に1.5億カナダドル(約9.49億香港ドル)を支払っている。MEGエナジーはオイルサンドをメインに扱い、推定40億バレル以上の原油を含有するオイルサンドの採掘借地権を100%保有している企業だ。2005年5月には、中国石油天然気集団公司(ペトロチャイナ)が、カナダの大手パイプライン会社エンブリッジに事業参画することに合意。
同月、中国石油化工集団公司(シノペックグループ)の子会社シノペック・カナダが、カナダのシネンコ・エナジー社がアルバータ州のノーザンライツに保有するオイルサンドの採掘権のうち40%を買収。買収金額は1.05億カナダドル。ここに挙げたのは、中国の企業ばかりだが、オイルメジャーもカナダの石油企業の買収に走りまわっているのだ。
By Master K/益田 慶