世界資源戦争 22 新興産油国・石油企業の躍進 PTT(タイ石油公社)とPTTEP(タイ石油開発公社)

アジア太平洋地域における2000年以降の新規石油発見件数で多かった国は、インドネシア、ベトナム、マレーシアで、それぞれ国営企業がオペレーションを進めている。それ以外の国の国営企業で元気なのが、新規ガス田開発によって収入の安定化を図り、近隣諸国でもオペレーション事業に投資しているPTT(タイ石油公社)だ。


2001年、タイ石油公団が株式会社に転換して誕生した企業で、タイ政府財務省による直接出資と政府が支援する基金を通じた間接出資分の合計が約7割を占める国営企業だ。フィリピンなど東南アジアの諸外国とも提携して石油・天然ガス関連の会社を経営しており、今日ではタイ証券取引所における取引の13%のシェアを占める最大級の大型企業として君臨。また傘下に数多くの子会社を抱え、単なるエネルギー企業としては収まりきらない規模にまで成長した。


天然ガスや石油の探鉱・開発・生産子会社として設立された子会社がPTTEP(タイ石油開発公社)だ。PTTによるPTTEP株式の所有比率は66.1%なので、PTTEPは法律上国営企業ということになる。同社の2006年の連結売上は1.2兆バーツ、総資産は7,510億バーツ。


PTTの収益の75%を占める天然ガス事業部門では、探鉱と生産、パイプラインによる輸送やガス分離と加工、下流の天然ガスやガス製品の販売を、石油部門では原油の探鉱と生産および輸送、精製と精製品の製造および販売などをカバーしている。2005年には中国海洋石油総公司(CNOOC)とその子会社である中国海洋石油有限公司(CNOOC Ltd)がPTTおよびPTTEPとの間で天然ガス田の探査・開発・生産に関する戦略的パートナーシップを謳った協定を結んでいる。


2006年時点でタイはエネルギー供給の62%を輸入に頼っており、そのほとんどは原油であった。原油高という背景があり、タイ政府は輸入エネルギーへの依存度を抑えるために国産エネルギーである天然ガスの優先的な利用を促したのである。こういった背景があり、天然ガスは主にタイ国内の発電に用いられている。


PTTEPは近隣・遠方にかかわらず積極的に海外進出を図っている。近隣諸国のガス資源開発は、ガス需要が増えつつある自国内市場に向けたガス供給源の拡充を目的としたもの。中東、北アフリカ、オセアニアなどへの進出は、異なる環境での操業経験や深海など高度な開発技術の経験ができる機会の創出だ。


2007年度にはバングラデシュ、エジプト、ニュージーランド、オーストラリア、バーレーンなどの国で探鉱に加わった。タイ経済の成長に伴って発電用ガスの需要は今後も中期的に増加する見込みであり、国産エネルギーを有効に活用する観点からPTTとPTTEPの重要性は一層増すものと考えられる。

PTTEPの所有する確認埋蔵量は天然ガスが中心で、2006年の生産量で計算した可採年数は13年と比較的長い。かつてはタイ最大のガス田であるボンコット・ガス田が総産出の約半分を占めていたが、新たに開発されたガス田の生産が本格化したことに伴って同ガス田への依存度は20%にまで低下している。2008年にはアーシット・ガス田の生産が始まる予定であり、同社の生産基盤はより広く分散化される見込みである。


PTTとPTTEPがアジアで大きな地位を占める可能性に満ちている二つの要因を挙げておこう。ひとつはタイ経済が堅調に成長する中で電力需要も安定的に伸びていること、もうひとつはタイ政府が国産エネルギーである天然ガスを有効に活用することを通じてエネルギーの輸入依存度を抑える方針を堅持していることだ。


現在タイ国内ではエネルギー取引の自由化が進行中だが、優良なガス田と長年に渡る実績を持つPTTEPは、自由化が進む中でも産業内における現在の地位を維持するものと予想される。PTTEPは今後も成長の機会を求めて海外の石油ガス田への投資を行なうだろう。今後中期的に中東や北アフリカといった地域における事業の比重が高まるのではないか、とアナリストは分析している。

By Master K/益田 慶