ヨーロッパの財閥と企業グループ 74 エネルギー資源をめぐる攻防(12)
先週のコラムで、フランス最大のエネルギー・環境会社SUEZ(スエズ) とフランス国営会社フランスガス公社GDFとの合併のニュースをお知らせしましたが、同じくフランスの電力最大手、フランス電力公社EDFは電力自由化の進む他国の電力会社の株式を積極的に買収し、ドイツ、中国、ベトナム、アメリカ、南米、アフリカなど世界の電力会社を傘下に置く多国籍企業となることで基盤を安定させてきました。
同社はユーロネクスト・パリの上場企業で、CAC40の採用銘柄(フランスの代表的な株価指数で、パリ市場に上場されている銘柄の中から、時価総額や出来高が大きく、代表的業種に属する40銘柄を選出して作成)となっています。
一方、イタリア最大の電力会社であるイタリア電力公社ENEL(エネル)は、1999年に再編され、民営化されました。この際に欧州連合の基準に合わせるために事業を分轄し、多くの発電所を手放しましたが、一方で各国の電力会社を買収し、多国籍企業へと成長しました。フランスからは原子力発電所の電力を輸入しているほか、フランスやスロバキアの新たな原子力発電所建設開発などに投資することで、将来の電力供給を確実にしてきました。イタリア政府が主な株主で、ミラノ証券取引所および二ューヨーク証券取引所に上場しています。
そのエネルは、スペイン最大の電力会社エンデサの買収を進めてきました。2007年7月、エネルとスペインの建設大手アクショナの共同買収提案に条件つきで同意しました。両社はすでにエンデサ株の46%を保有しています。
エンデサはスペイン最大の電力会社であり、ガス・水道事業も行っています。IBEX35指数 (最も流動性の高い 35 銘柄で構成されるスペイン連続時間市場の指標株価指数)のひとつに選ばれ、マドリード証券取引所および二ューヨーク証券取引所に上場しています。
原子力・火力・水力の各発電によりスペイン国内で1000万人以上に電力を供給しているほか、イタリア、フランス、ポルトガルなど欧州、チリ、アルゼンチン、コロンビア、ペルー、ブラジルなど南米でも電力事業を展開する多国籍企業です。
2004年には、フランスの電力会社SNETを買収しています。巨大グループに成長したエンデサですが、2006年にはスペイン最大のガス会社ガスナチュラル、ドイツのエーオンに相次いで敵対的買収を仕掛けられました。
この際に欧州委員会は、スペイン政府がエーオンの買収を妨害したとして同政府を欧州司法裁判所に提訴する事件にまで発展。最終的にエネルとアクシオナが7兆円でエンデサを買収することになりましたが、一部の幹部はドイツのエーオンの傘下に入ることを望んでいたという情報も入っています。
そのエーオンに次ぐドイツ第2位の電力会社RWE AGは、国外では中欧、イギリスのイノジー、アメリカのアメリカン・ウォーター・ワークス、チェコのトランスガスなど電力・ガス・水道会社の大型買収を進め、世界有数の公益企業となっています。
ドイツ株価指数(DAX)の30銘柄のひとつに選ばれ、フランクフルト証券取引所に上場しています。ドイツでは1998年の電力自由化によって、当時8つあった電力会社は以下の4つのグループに再編成されました。
(1)エーオン (2)RWE AG (3)スウェーデン公営電力会社グループ企業バッテンフォール・ヨーロッパ (4)フランス電力公社EDF傘下のEnBW。
そのドイツでシェアを確保したスウェーデンの大手電力会社バッテンフォールも1996年の電力自由化以降、同社は送電線によって結ばれた北欧諸国を中心に地盤を固め、フィンランド、デンマーク、ポーランドなど欧州各国に買収の手を伸ばし、各国に火力・原子力発電所を保有する欧州有数の多国籍企業に成長しました。
このように欧州における電力の自由化は、欧州に巨大な多国籍企業グループを出現させる要因となったのです。
完
By Master K/益田 慶