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ヨーロッパの財閥と企業グループ 73 エネルギー資源をめぐる攻防(11)

欧州連合が1987年の構想以来進めてきた電力の自由化により、エネルギー産業界の企業統合が加速しました。今年9月には、フランスの国営企業「フランスガス公社」(GDF)と、大手エネルギー・環境企業のスエズとの合併が発表されました。これによって時価総額約909億ユーロ(約14兆3622億円)の世界第3位(世界1位ガスプロム、2位エーオン)の巨大なエネルギー会社が誕生します。現在の欧州エネルギー産業の売上ベスト7は、以下の通りです。


1位 ドイツ最大のエネルギー企業グループE.ON(エーオン)
2位 フランス最大の電力会社 フランス電力公社EDF 
3位 フランス最大のエネルギー・環境会社SUEZ(スエズ)
4位 イタリア最大の電力会社 イタリア電力公社ENEL(エネル)
5位 ドイツ第2位の電力会社 ライン・ヴェストファーレン電力会社RWE AG
6位 フランス国営会社のフランスガス公社GDF
7位 スペイン最大の電力会社 エンデサ


(注意:上記順位は出典データによって異なり、1位EDF、2位エーオン、3位スエズとするデータや、1位エーオン、2位エネル、3位EDFとするデータがある。これはグループ売上とエネルギー事業単独売上という計算の仕方の差異だと思われる)


G7先進国からドイツ、フランス、イタリア、スペインの4国がランクインしているのは順当でしょう。興味深いのは、これら上位7社が互いにM&Aを仕掛けてきたことです。


フランスガス公社(GDF)とスエズが合併して誕生する新会社GDFスエズは、合併後も国が株主総会などで提案を阻止できる最低線の33%の株を保有します。社長にはスエズのメトラレ社長が就任する予定で、合併は2008年初頭とのこと。フランス政府は現在GDF株の80%を所有しており、スエズとエネル(イタリア)との合併を妨げるためにGDFに対して独自の合併活動を働きかけたようです。両社の合併計画は2006年2月、エネルによるスエズ買収を阻止するために、当時のドビルパン首相が、国外からの敵対的買収への防衛策として主導しました。国が敵対的買収の防衛策を企てるほどの大事件だったのです。


しかし、合併を前提にしたGDFの民営化で人員整理などを恐れた労組の野党の強い反対に加え、欧州委員会からの競争問題への抵触の指摘などがあり停滞していました。一方、スエズを買収しようとしたエネルは、エンデサ(スペイン)の買収を進めているほか、スロベニア、ギリシャ、フランス、ベルギー、トルコ、ブルガリアなど欧州各国の電力会社を所有及び協力し、発電所を運営しています。


さて、フランスの週刊誌によると、サルコジ大統領はGDFとスエズの合併条件として、スエズに環境部門(水道・廃棄物処理事業)の大半を切り離し、エネルギー事業に注力するよう要請したものの、メトラレ社長がそれに抵抗したため、交渉が土壇場まで難航していたようです。


最終的には、スエズは水道・廃棄物処理事業の約65%(アナリストによる推定価値は180億―200億ユーロ)をスピンオフし、規模の小さいGDFとの対等合併が政治的に認められる規模に事業を縮小するようです。スエズの環境事業をスピンオフ(分離・独立)する前の両社の時価総額は、合わせて900億ユーロ(1230億米ドル)。新企業の年間収入は720億ドル、全体の労働者は約20万人となる見込みです。


ほかには2005年にフランス電力公社(EDF)によるイタリアの電力大手エディソンの買収が行われるなど、欧州エネルギー企業は激しい攻防を続けてきました。これらの一連の動きは各企業や国の戦略に基づいた、独立した動きのように見えますが、欧州連合による電力の自由化が引き金になっていることだけは確かです。資源の枯渇と価格の高騰、温暖化の要因などの観点から欧州で進められてきた「脱石油」政策の結果、現在は電力とガス部門の企業統合が急速に進みつつあり、大手の統合はいっそう加速すると予想されます。それは世界的な規模の、新たな多国籍企業クループの誕生を示唆しています。


By Master K/益田 慶