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ヨーロッパの財閥と企業グループ 72 エネルギー資源をめぐる攻防(10)

世界的な経済情勢の変化に伴い、石油をはじめとする資源価格が急騰しているのは周知の事実です。欧州のエネルギー資源をめぐる攻防も熾烈さを増し、石油のみならず電力業界も弱肉強食の世界になっています。9月半ば、ドイツ最大のエネルギー企業グループ「エーオン」がロシアの電力会社「OGK-4」の株式69%を落札したというニュースが飛び込んできました。応札提示額は約40億ドル(約4614億円)。ロシアのイタル・タス通信によると、同国の電力独占企業「統一エネルギーシステム」(USE)のアナトリー・チュバイス最高経営責任者はエーオンの落札について「ロシア電力部門の歴史上最大の投資案件だ」と語ったとのことです。エーオンはOGK-4の株式を取得するため、キロワット当たりの発電能力に対して753ドルを提示したことになります。


OGK-4はロシアにある発電会社6社のうちのひとつで、これら6社は、統一エネルギーシステムの電力部門独占を解消するため、同部門の広範な改革の一環として設立された会社です。同社はロシアに5つの発電所を所有し、既存設備の総発電能力の約3.9%を占めています。そのOGK-4を傘下に収めるということは、エーオン社がロシアに進出したということではなく、その反対に欧州各国にロシアで生産された電力を供給するひとつのルートを握ったということです。


ちょうど同じ頃、EUの行政執行機関である欧州委員会が、ヨーロッパのエネルギー市場に参入する外国企業に課す厳しい規制案を発表しました。この規制案には二つの意味があります。ひとつは地球温暖化の防止策としてEUが世界を新たな産業革命、すなわち低炭素経済へと先導しようという宣言です。アメリカのグローバリズムに対抗し、EUが独自にクリーンで効率的なエネルギーミックスの利用を促進しようという目論みがあるように見えます。


エネルギー生産やエネルギー消費による温室効果ガスの排出に歯止めが利かない状態が続いています。このような国際的状況下で、EUの石油・ガスの輸入依存度は増加傾向を示しています。将来的にエネルギーを安定的に供給することは、日本同様、EUでも現在緊急の課題となっているのです。そこで、欧州委員会は2006年春、中期的なエネルギー政策の策定に向けて、グリーンペーパーを作成しました。これは欧州委員会が作成する、EUにおいて規定が制定されていない特定の分野に焦点をあてた文書のことです。


2030年には、EU域内で必要なエネルギーのなんと70%以上を輸入に依存するようになると予測されていることから、このグリーンペーパーでは、消費者の意識や生活スタイルを変え、さらには新たな技術を開発することにより、2020年までにエネルギー消費を20%削減することを第一の目標にしています。消費者意識の改革としては、省エネタイプの家電に買い換えるよう呼びかけるなど、積極的にキャンペーンを展開していく計画です。


歴史的に見れば「エネルギー政策」は、「石炭鉄鋼共同体」や「原子力共同体」の設立という、これまでの欧州統合の中核をなすものでした。それが近年では、電気・ガス、および再生可能エネルギーの単一市場の形成など、ひとつの「共通エネルギー政策」を確立するという方向に向かって、新たな展開を見せてきました。これは「成長を促し、雇用を促進する」という二つの基本的な目標を達成し、競争力を強化することにつながるものとされています。


規制案のもうひとつの意味は、業界再編成を経た欧州の有力エネルギー企業グループの保護にあるように読み取れます。電力の自由化、原発開発の停止によってエネルギー企業の再編成を進めてきたEUは、もはや一国だけでエネルギーの供給と需要が成立することはありません。電力やガスを供給する国があり、それを売買する企業があり、エネルギーを買わざるを得ない国があるということです。


By Master K/益田 慶