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ヨーロッパの財閥と企業グループ 64 エネルギー資源をめぐる攻防(2)

EUは通貨統合に続いてエネルギー市場を自由化し、段階的にではあるが単一市場への道を歩んでいます。まず1987年に域内の電力自由化構想を提唱。97年に「EU電力市場規制緩和指令」が成立発効。これによって加盟諸国は2年以内に国内市場を自由化する立法措置を講じることが義務づけられました。具体的には、2000年に年間2000万キロワット時以上、2003年には900万キロワット時以上の大口需要家を対象にした自由化でした。


EU加盟国では、「電力指令」に先んじて英国、ドイツ、スウェーデン、フィンランドの4カ国が全面自由化し、フランスは指令に定められた最低限(30%)にとどめて自由化しました。
こうして欧州の電気事業は再編を余儀なくされました。一方、原子力産業は発電所の発注低迷を受け、原子力関連企業の合併・買収(M&A)が進み、こちらも勢力地図は塗り替えられました。それは国境を超えたサバイバルマッチの様相を呈しています。


米ウェスチングハウス社が1998年にドイツ最大の総合電気メーカー、シーメンス」に火力発電部門を売却したのに続き、1999年には原子力部門をイギリス原子燃料会社(BNFL)に売却。さらにBNFLは2000年、電気工学の世界的リーダーABB社(スイス)から原子力事業部門を買収。また、仏フラマトム社と独シーメンスも1999年、両者の原子力事業を統合することで合意。2001年には新会社フラマトムANP社が、フラマトム社66%、シーメンス社34%の出資により設立されました。


スウェーデン・マルメ市に本社を置くシドクラフト社は、バーセベック原発やオスカーシャム原発など国内で稼働中の11基のうち4基を運営する、スウェーデン第2位の規模の電力会社ですが、株式の55%は2001年5月からエーオン社(ドイツ)が握る「外資系企業」です。原発19基があるドイツでは、大手電力4社と政府との間で200年6月、「原発は運転期間32年ですべて廃止する」ことで合意しています。そのうちり最大手がスウェーデンに進出し、第2位の電力会社を通して事業展開しているわけです。エーオングループは、ドイツを代表する企業グループではなく、欧州を代表するそれへと脱皮したのです。


スウェーデンでは96年から電力の自由化がスタート。電気料金の低下に伴って電力会社間の競争が激しくなったうえ、フィンランド最大手で原発2基を持つフォータム社が3位のビリカエナジー社の株式を100%取得するなど、他国の電力会社の攻勢にもさらされるようになっていました。さらに電力事業の基幹を占める原発について、政府が脱原発へ動いたことも大きな影響を与えました。そこでシドクラフト社は原発を廃止し、欧州全域への進出に活路を見いだすエーオン社の傘下に入ることで、電力自由化、脱原発時代の生き残りを図るという方向を選んだのです。


ドイツも98年の電力自由化スタート以来、海外企業の進出が激しく、再編が進みました。自由化スタート前まで電力供給の90%を占めてきた大手8社は4社に合併され、そのうちドイツに本社を構える企業は2社だけで、半分は外資系です。1社は99年からフランスの原発58基すべてを保有するフランス電力公社(EDF)による買収が進み、株式の34・5%と事実上の経営権を握られています。もう1社はスウェーデンで原発6基を経営するバッテンフォール社によって子会社化されました。将来の原発全廃を宣言したドイツは、代替エネルギーの確保に奔走中で、ロシアから天然ガスを輸入するとともに、電力の輸入も行わざるを得ない状況です。そこに欧州のエネルギー企業が進出する余地があり、この競争に負ければ、ドイツは海外資本に占められてしまうかもしれません。


ドイツ企業がスウェーデン企業を買収し、フランス企業がドイツ企業を買収する……エネルギーをめぐって、まるで「第一次欧州大戦」が始まったかのような様相です。


By Master K/益田 慶