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2008年3月19日 20:20Vision 円高が止まらない

円高が止まらない


アメリカ経済の後退が明確化し、ドル売りが鮮明化しつつあります。ニューヨーク証券取引所は、経済指標に一喜一憂しながら結果的に悪材料に押されて低迷しています。FRBによる公定歩合利下げ、政策金利利下げも効果は短期に終わり、日本のバブル崩壊を彷彿させる様相になりつつあります。


アメリカ経済の低迷により日経平均も大きく下げています。ドル安による円高に過敏に反応して、株価の下げは実態以上に下げているようです。


ところで、株価が低迷し、労働人口は減少、金利も安いのに、なぜ円は買われるのでしょうか? 高度成長が見込まれるわけでもなく、人口が増えるわけでもない。アメリカやヨーロッパに比べれば、サブプライムローン問題による損失も少ないとはいえ、株価は下がっています。にもかかわらず、なぜ円は買われるのか。


為替変動要因として長期的な要因として実需があります。短期のボラティリティを発生させる要因は仮需・投機筋によるものがあります。日本の為替市場の恒常的要因として貿易黒字があります。2005年、2006年の貿易黒字は、合わせて10兆円程度でした。2007年は貿易黒字幅が増大して12兆円ほどになっています。


これに対し、2005年、2006年の円売り要因であった日本の投資家・企業による対外投資は14兆円-15兆円程度でした。この5兆円ほどの円の売り越しが円安を支えてきました。ところが、2007年は対外投資が12兆円ほどに減少したのと同時に、貿易黒字額も12兆円ほどになり、売り買いが拮抗してきました。


では、今後はどうなるでしょうか。ドルは相次ぐ利下げにより2%目前になってきています。円高ドル安傾向とドル金利低下によりドル円キャリーが発生する余地はありません。円売りを仕掛ける投機筋も出てきません。このような円売り要因となる投資家・企業が出てこない以上、貿易黒字以上の円売りはあり得ませんから、必然的に円は常に買い圧力がかかってくることになります。


また、すでに日本の対外資産は2006年末現在で215兆円に達しています。急速な円高ドル安を嫌った投資家による対外資産の売却が出た場合、大きな円高要因となります。日本の貯蓄率は急速に低下していますが、これは団塊の世代が引退して貯蓄の取り崩しが原因のひとつになっています。年金生活者が貯蓄を取り崩す場合、現況のような円高時に円資産を取り崩すのか、外貨資産を取り崩すのか。いずれにしても外貨資産を積み上げる可能性は低く、円高要因しか残りません。


さらに、多くは語られませんが、外国人による円建て住宅ローンが相当額に達していると考えられます。オーストラリア、ニュージーランド、韓国、スペイン、ポルトガルなど多くの国で住宅ローンを円建てで組んでいるケース多く見られます。今後、円高局面での円建て住宅ローンの増加は考えづらいですから、既存の住宅ローン債務者はローン返済を円建てで行うことになり、常に円買い需要が発生し続けることになります。


日本の経常収支を見ると、貿易黒字による収入を貿易外収支が上回ってきました。つまり利息、配当、印税、特許権の受取額が貿易収支を超えているのです。この額は年々増加しており、一方的に受け取るだけの資金ですから常に円買い要因となります。

さらに加えて、観光収入が急速に増えています。小泉政権時に策定した”Visit Japan”キャンペーンが円安とともに奏効し、これまで大幅な旅行収支の赤字幅が縮小してきています。貿易による黒字は縮小しても、貿易外収支が大幅に伸びている現状では、円を売り支えることは不可能です。


このような理由から当面は円高傾向は続くと思われます。ドル安要因の問題が解決することと、円高要因は関連性はあるにせよ、別の問題として考えておかないと状況を見誤ります。


本来は円高は国民にとって良いことだと思います。ところが日本社会、日本政府は円高を国民の利益、国民の幸福につなげる努力をしてきませんでした。円安による海外での買い負けは食糧安保をないがしろにしてきた付けです。バブルの再来は望みませんが、円高を背景とした内需振興策による景気浮揚は適正な市場開放、規制緩和が必要です。在外圧力に屈した無理な規制緩和や不平等性を助長する規制緩和、官僚支配を強化するような愚は避け、国益を最優先した政策の実行を期待したいものです。