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2008年3月28日 20:20Vision チベット問題&グローバル人権聖火リレー

先日、テレビ朝日報道ステーションだと思いますが、朝日新聞編集委員の星浩氏のコメントを聞いて耳を疑ってしまいました。最近の毒餃子事件やチベット弾圧事件を取り上げて、中国のこのような対応(マスコミの締め出し、事実隠蔽など)は、自ら中国の民主主義が擬似民主主義であると疑われるような行為であると言っていたことです。


わたしは、これまで中国は民主主義国家だとは思っていなかったので、この発言にビックリしてしまいました。朝日新聞は、あるいは星浩氏は中国を民主国家として報道してきたのでしょうか? 胡錦濤主席が一介の技術テクノクラートから国家主席にまで上り詰めた理由は、まさにチベット弾圧の功績を買われての出世です。


胡錦濤は、1964年、理科系の名門・清華大学の水利工程系を卒業して、水力発電の技術者として世に出ていますが、卒業と同時に安徽省の中国共産主義青年団で政治活動を始めています。中国の国家権力はいくつかの出身派閥で形成されていますが、中国共産主義青年団は近年、出世コースとして注目されています。


胡錦濤が官僚として優秀であったことは、その後の経歴を見れば明らかです。1984年、中国共産主義青年団中央第一書記、1985年9月、中共中央委員会の常任委員、同じ1985年には42歳にして貴州省の共産党書記に抜擢されています。貴州省というのは中国国内でも最も貧しい省のひとつです。その後、1989年1月にはチベット自治区の共産党書記に就任しています。就任早々の3月7日、ラサに戒厳令を発令しています。当時のチベットは、民族独立運動が激しくなりつつあったころです。中南海(中国共産党本部)は、この運動を抑え込むために武力による弾圧を強化しています。多くのチベット人を弾圧、逮捕、投獄、虐殺しています。同時に漢民族の移民を行い、チベット民族の混血化と希薄化を推進しています。かつて中国を支配していた清国は満州族(女真族)によって成立しましたが、共産中国になってからはすべての女真族がチベットに強制移住させられ、混血が進められ、『民族浄化』が進んだ結果、現在では人口1万2000人程になってしまいました。スターリン時代のソ連が、ヒトラー以上にユダヤ人を弾圧し、満州ソ連の国境にユダヤ人自治区を作って強制移住させたのと同じ行為を女真族に対して行ったのです。


チベット民族の人口は700万人程度と推測されますが、その多くは中国、ネパール、インド、ブータンに住んでいます。また、多くの亡命者が世界各地に点在しています。ブータンはチベット民族が唯一国連加盟している国家です。中国国内ではチベットはチベット自治区のことを指しているようですが、歴史的にはチベット自治区、青海省、四川省西半分、甘粛省南西部、雲南省北西部までがチベットであり、現実にチベット人が多く住んでいる地区でもあります。中国国内には600万人のチベット人が住んでいると推定されますが、中国の2000年の国勢調査・第五次人口普査でチベット族は542万人とされています。度重なる弾圧で人口の20%を失ったといわれています。これは現在進行形です。


チベットには、1642年にラサを首都とし、ダライ・ラマを国家元首とする宗教国家ガンデンポタンが成立していました。以降、独立を保っていました。1951年、毛沢東とダライ・ラマ14世の会談が北京で行われました。しかし、無神論を強要した上に、1951年、中国人民解放軍はチベットに一方的に侵攻し、17ヶ条協定を締結させられました。17ヶ条協定とは、正式呼称を「中央人民政府と西藏地方政府の西藏平和解放に関する協議」といい、一方的に軍事侵略したうえに虐殺、強制を加え、1912年以来、チベット政府(ガンデンポタン)が求めてきた、中国とは別個の独立国としての国際的地位を否定し、中国によるチベットの併合を「祖国大家庭への復帰」、「解放」と位置づけて結ばれた協定です。


中国の2000年の国勢調査では、チベット自治区の人口の80%はチベット民族で構成されており、「民族浄化」など存在しないとしているが、チベット亡命政府によれば、ラサの過半はすでに漢民族によって占められていると主張しています。


話を胡錦濤に戻しましょう。
1989年3月のラサ戒厳令を発令した胡錦濤チベット自治区共産党書記長は、多数のチベット人虐殺を行い弾圧しました。この弾圧が中南海(中国共産党本部)に評価され、1990年10月、チベット軍区中国共産党委員会の第一書記の兼任を任命されています。ものすごい出世です。さらに1992年10月には47歳にして中国共産党中央政治局常務委員に任命されています。


1989年6月には、天安門事件が起こっていますが、民主化運動のチベットへの波及を防御するために再度ラサに戒厳令を敷いています。その際、「分離主義の弾圧」「経済建設を推進」を掲げ、通算4年間のチベット統治徹底した弾圧と一貫した民族浄化により中国共産党本部から高い評価を得ました。


1997年9月、第15回中国共産党大会で政治局常務委員に再選され、翌1998年3月全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、国家副主席に選出、さらに翌1999年9月、軍事委員会副主席に選出されています。胡錦濤が日本で注目され始めたのはこの頃からですから、胡錦濤とチベット問題の関連について話題に上ることは少なかったようです。


その後、2002年11月、中国共産党第16期中央委員会第1回全体会議(第16期1中全会)で新総書記に選出され中国の最高権力者となったのです。翌2003年3月、全人代で国家主席に選出されています。その後、前国家主席である江沢民の影響を少しづつ排除しながら、2004年9月、中国共産党第16期中央委員会第4回全体会議(第16期4中全会)で、党中央軍事委員会主席となり、党・政府・軍の権力の全てを事実上掌握し、胡錦濤独裁が成立したのです。2005年3月、全人代で国家中央軍事委員会主席に選出され名実ともに全権力を掌握しました。


さて、このような独裁国家を民主主義国家と呼ぶ朝日新聞の報道姿勢には常にバイアスが懸かっていると考えなければ事実を見誤ってしまうので注意したいのもです。今回のチベット弾圧事件は、これまでであれば反中国を標榜する右寄りの団体、政党、報道が従来通りの中国批判を繰り返すのは当然でしょう。ところが今回は、左翼系、リベラル政党、マスコミ、政治家、歌手、俳優などが人権的観点からチベット民族全面支援の声を送っているのです。サルコジ仏大統領、ブッシュ大統領、ハベル前チェコ大統領、リチャード・ギア、スティーブン・スピルバーグなど影響力のある知名人がアクションを起こしている。右からも左からも批判されるのは独裁国家であるが故です。


チベット民族独立運動側は、北京オリンピックを機に世界的世論を味方につけて行動を起こしたのであろうと推測されます。この辺りは台湾の総統選にも見られるのかと思いきや、台湾国民は対立路線を回避したようです。無神論の中国共産党も儒教的背景からは抜け切れず、面子を潰されることを極端に嫌います。台湾はこれを恐れたのかどうかは分かりませんが、現在の台湾住民はすでに『台湾人』であり、台湾に住む『中国人』ではありません。いまさら民主主義を捨てる気持ちはないでしょう。むしろ曖昧さを維持しながら時間を掛けて中国の『台湾化』、すなわち民主化を図っていくのが現実路線なのかもしれません。


今後、世界各地で聖火リレーが行われるが、この聖火リレーはすでに『グローバル人権聖火リレー』と呼ばれている。チベット問題を機に中国政府が世界各地を人権問題の火を分けて走るまさに『グローバル人権聖火リレー』なのである。オリンピック直前には北海道・洞爺湖サミットが開催される。主題は『環境サミット』であるが、場合によっては『人権サミット』になるかもしれない。中国国内では現在でも南北間でお互いを『呉の国』『越の国』などと呼んでいる。まさに『呉越同舟』ならぬ『呉越同州』なのである。中国内にはチベット以外にも『新疆ウイグル自治区』(トルキスタン)『内モンゴル自治区』(モンゴル人)『広西チワン族自治区』(タイ系)など民族自治区が多く存在する。チベット問題がこれらの地区に飛び火し、問題化しないことを祈るなどと朝日新聞的なことは言わない。これらの地区の問題は顕在化していないだけであり、現在も民族浄化は進められている。むしろ顕在化し、世界の目が向くことが人権擁護の視点であろう。