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ヨーロッパの財閥と企業グループ 62 欧州財閥の系譜(38)

以前のコラムで紹介した、ロシア国営原子力メジャー「アトムエネルゴプロム(AEP)」が7月に設立されていたことがわかりました。当初の報道によれば「年内に設立予定」とされていましたから、随分早く開業したことになります。


理事会会長にはロシア連邦原子力庁のキリエンコ長官が、社長には同庁のタラビン次官がそれぞれ任命されました。AEPは、核燃料加工会社のTVEL社、濃縮ウランをはじめとする核燃料サイクル製品の輸出会社「ロシアテクスナブエクスポート社(テネックス社:TENEX)、原子炉輸出メーカーの「アトムストロイエクスポート」及び原子力発電会社の「ロスエネルゴアトム」といった主要な国営原子力企業などを年内にも全て統合するとのことです。


注目したいのは、新興財閥ウラジミール・スミルノフ社長が率いるテネックス社です。スミルノフはプーチン大統領に近い人物で、石油関連企業の代表を経て2002年、同社の社長に任命されました。同社は40年以上にわたって、ロシア原子力庁の対外貿易の窓口として政府から全権委任され、濃縮ウランをはじめとする核燃料サイクル製品の輸出を行っており、濃縮ウランでは「世界のビッグ4」のひとつといわれています。テネックス社の主な事業は、濃縮ウランおよびウラン濃縮役務の供給など核燃料サイクル関連製品と役務の提供です。同社は産業全体の輸出量の半分以上を占め、使用済み核燃料の取扱いに関するサービスおよび濃縮サービスをアジアや太平洋地域の電力会社に供給することを事業に掲げてきました。


昨年10月には、テネックス社と三井物産との間でサハ共和国アルダン地区にあるウランの未開発鉱床「ユージナヤ」鉱区の事業化調査を共同で行い、三井物産が将来、本プロジェクトに参画する為の独占交渉権を得ることに合意しています。テネックス社が「アトムエネルゴプロム(AEP)」と統合され、三井物産の共同出資による合弁事業が実現した場合、三井物産はロシア国内においてウラン権益を取得する初の外資企業となるのです。


ロシアは、高騰する豊富なエネルギー資源をテコに、ソ連崩壊で甚大な打撃を受けた経済と国家機構を着実に復興させています。それに伴い日本などの外国企業に活躍のチャンスが到来しています。特にパイプを含め建設機械や自動車など日本の商品はブランド力に加え、品質、性能から、ロシアでは確実に売れるといわれています。しかし、世界を牛耳るエネルギー帝国を目指し動き始めたロシアの力の根源である石油や天然ガスの開発分野に、日本は十分に食い込めていません。


当のロシアは中国と競うように、旧ソ連圏のカザフスタンやトルクメニスタンなど中央アジアの新興エネルギー大国に進出しています。カザフスタンは先週のコラムで紹介したように地下天然資源が豊富な国です。隣国のトルクメニスタンは、国土は狭いながら天然ガスと石油の産出国です。特に天然ガスは世界第4位の埋蔵量を誇っています。2005年度のGDPは約10パーセント。主な輸出国は、(1)ウクライナ (2)イラン (3)トルコ の順。天然ガスの搬出ルートの多様化を図る中で、イラン、アフガニスタン、中国との関係を進めています。


一方ロシアは、トルクメニスタンからカスピ海沿岸に沿い、隣国カザフスタンを経由しロシアに至るルートを通るパイプラインの新設計画を発表。本年5月、トルクメニスタン、カザフスタン両国首脳と合意に達しました。この開発には、カピス海周辺における欧州列強と米国、中国の影響力を低下させる目的もあります。実は近年米国が、カスピ海を横断するガスパイプラインの建設を主張していたので、ロシアの案が採用されたことになります。パイプラインが完成すれば、トルクメニスタンは天然ガスの輸出大国にランクインし、ロシアとの関係がさらに深くなると見られています。このようにエネルギー資源国をめぐるロシア、米国、中国などの駆け引きは至るところで展開しているのです。


By Master K/益田 慶