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ヨーロッパの財閥と企業グループ 59 欧州財閥の系譜(35)

先週のコラムで紹介した、設立すれば世界最大の原子力開発企業になるであろう、ロシア国営企業「アトムエネルゴプロム」社(原子力エネルギー産業社)の初代会長にキリエンコ原子力庁長官が決定しました。そうです、エリツィン大統領時代に35歳の若さでロシア首相に就任し、1998年にルーブル切り下げとデフォルトを発表し、ロシア通貨危機を招いたあの政治家です。ロシアも彼自身も存続の危機を乗り越え、たくましく生き残ったということです。


政治家になる前のキリエンコは、明らかに新興財閥の一人でした。1991~94年、AOコンツェルン「AMK」会長を務め、94~96年にはニジェゴロド社会商業銀行「ガランチャ」頭取、97年には石油会社「ノルシ・オイル」会長を務めています。エリツィン時代の燃料エネルギー省第一次官就任時には世界最大のロシアの天然ガス会社「ガスプロム」政府代表参与会議長を務めました。

98年に首相に任命されましたが、ロシア通貨危機を収拾できなかった責任を取って解任された後、下院議員に当選し、2000年5月にプーチン大統領のもとで新設された沿ボルガ連邦管区の全権代表に任命され、同年11月、ロシア原子力庁長官に任命されました。若きビジネスマンが資本を貯め、政界にデビューし、一度首相の座に登りつめ、失脚したものの復活を果たし、いま再び脚光を浴びているというわけです。


プーチン大統領が署名し、年内の設立が決定した株式上場会社「アトムエネルゴプロム」社は、その傘下にすべての平和利用原子力エネルギーに関する計画を集中させ、原子力分野のすべての民間企業を統合させる連邦所有の会社になります。同社の垂直統合型構造は、ウランの採掘と濃縮、核燃料の製造と加工、そして原子力発電所の設計と建設といった、一連の自然循環産業サイクルを論理的に連結し再統一することになります。完成すれば世界最大規模の原子力企業グループになるわけです。その会長に就任したキリエンコは、多くの利権を手にしたともいえるでしょう。


そしてロシアとカザフスタンは今年5月、共同でロシアの東シベリアにウラン濃縮の国際センターを創設する政府間協定に調印しました。調印はプーチン・ロシア大統領のカザフ訪問に合わせて行われました。同大統領は引き続き豊富な天然ガス資源を持つトルクメニスタンを訪問、中央アジアを対象にエネルギー分野でロシアの影響力強化を図る目論見です。プーチンはナザルバエフ・カザフ大統領との会談で、ウランの採掘やパイプラインによる資源の輸送でも協力を拡大することなどを合意したそうです。


両国は、世界2位の埋蔵量があるカザフスタンのウランを、2009年までに年間1000トンを共同で採掘、将来的には年間6000トンまで増やす計画を立てています。ウラン濃縮の国際センターは東シベリアのアンガルスクにある民生用施設を利用するもので、核拡散防止などの観点からロシアが提唱し、各国に参加を呼びかけていました。具体的な参加合意はカザフスタンが初めてで、ロシア側によるとアルメニアやウクライナなど数カ国も参加を検討しているとのことです。ちなみに同センターは国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる方針。参加国も原子力施設の利用を民需用に限る保証が必要です。


さて、ここに経済産業省が今春公表した「資源外交」があります。この資料によると、日本は今後カザフスタンに向けて原子力分野で協力をしていくとのことです。カザフスタンは1991年にロシアから独立した共和国で、ロシア、中国と国境を接しています。実はカザフスタンは鉱物資源の輸出により経済成長を続ける、天然資源依存型の国です。例えば、採掘量が世界第10位以内に達する地下資源が9つも存在しています。エネルギー資源では、石炭とウランが有望。特にウランは「世界第2位の埋蔵量」と言われています。
日本はこのウラン開発から参加し、前述したウズベキスタンとロシアの合弁による「ウラン濃縮国際センター」で再転換、つまり燃料加工を促し、そこに技術提供をするというシナリオを描いているのです。

By Master K/益田 慶