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ヨーロッパの財閥と企業グループ 57 欧州財閥の系譜(33)

先週のコラムで新興財閥出身の首長としてクラスノヤルスク地方のアレクサンドル・フロポニン知事、サハ共和国のビャチェスラフ・シトイロフ大統領を紹介しましたが、ロシアでは大統領候補もまた国営企業の経営を担っています。

次期大統領候補の筆頭はプーチンの盟友、第一副首相のドミトリー・メドヴェージェフです。国民の支持率の高い政治家で、世界最大の天然ガス企業「ガスプロム」会長も務めています。もう一人の最有力候補セルゲイ・イワノフ第一副首相は軍事産業と民間経済を担当しているものの、国営企業の経営職には就いていません。しかし、メドヴェージェフ補佐役の大統領府副長官イーゴル・セチンは石油最大手「ロスネフチ」会長を務めています。また、ミハイル・フラトコフ首相は1998年5月から保険会社「インゴスストラフ」取締役会長、1999年2月から社長を務めた人物です。さらに、2003年まで大統領府長官を務めたアレクサンドル・ヴォローシンは退任後、ロシアの独占電力会社「統一エネルギーシステム」の取締役に就任しています。こうなってくると、新興財閥と政治家の区別はつきにくく、また政治家になってから国営企業の経営を担うため、権力が独占されるのは至極当然といえるでしょう。

注目したいのは、チュメニ州知事を経て、2005年11月ロシア連邦大統領府長官に就任した大統領府長官のセルゲイ・ソビャーニンが2006年春、原子力産業を統括する国営企業TVEL (TVELはロシア語で熱放出成分という意味)の会長に就任したことです。同社は原子力発電所向け燃料供給業者です。

北朝鮮が核施設を保有していることに対して厳しく非難したロシアですが、当のロシアこそが「激安原子炉」ビジネスの先頭を突っ走っている原子力大国です。プーチン大統領は核ビジネスを重視し、中国やインド、イランへ原子炉を輸入し、ベトナム、トルコ、ベラルーシ、カザフスタン、エジプト、モロッコとの間でも商談が行われているのです。

今年3月、TVELはベトナム南部ダラットにある同国唯一の試験用原子炉向けに低濃縮ウラン燃料を供給する契約を関係機関と結んだと発表しました。同原子炉では現在休止中で、今年9月に燃料棒の種類を高濃縮ウランから低濃縮ウランに切り替えることを計画しており、TVELはノボシビルスク工場でベトナム向けの低濃縮ウラン燃料を生産しています。

そして今年4月、プーチン大統領は民間の原子力関連企業を統合した国営独占企業「アトムエネルゴプロム」を年内に設立するよう政府に命じる大統領令に署名しました。最初の段階では、30社の株式を資本に組み入れることになっています。そのうち巨額投資する一社が、大統領府長官のセルゲイ・ソビャーニンが会長を務めるTVELです。


ご存知の方は多いと思いますが、原油価格高騰や地球温暖化などを背景に、世界的に原子力発電所の燃料となるウランの需要が急増、価格が高騰しています。ロシアは独占企業設立によりウラン国際市場での影響力強化を図るとともに、日本などと民間部門での協力拡大を目指す方針です。

そして同月にはこんなニュースが飛び込んできました。東芝がロシアでの原子力発電所の建設参入を目指してロシア側と行ってきた提携交渉で、発電機などの原発用機器の工場をロシア国営企業と合弁で設立することが明らかになったのです。4月に来日したロシアのセルゲイ・キリエンコ原子力庁長官やアトムエネルゴプロムの関連会社首脳が東芝幹部と会談し、大筋合意する見通しであるとのことでした。実現すれば、日本企業が海外で原子力発電用の機器を生産するのは初めて。

この合弁相手こそが、ロシアが設立準備中の国営原子力独占企業体アトムエネルゴプロムで、合弁工場では大型の蒸気タービンや発電機、水蒸気を冷却する復水器などが生産される見込みです。


By Master K/益田 慶