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ヨーロッパの財閥と企業グループ 54 欧州財閥の系譜(30)

広大なロシアには、地方都市にも強大な企業グループが君臨しています。ヨーロッパに近いリペツク市にロシア第3位の鉄鋼メーカーで世界有数の冶金コンビナート「チェリャビンスク冶金コンビナート」(略称:メチェル)があります。ヨーロッパ最大の鉄鉱山に近く、またバトル海や黒海に近いので、ロシア屈指の輸出メーカーのひとつになっています。同社をはじめ複数の石炭会社を傘下におさめる企業グループが「メチェル」です。創設者のイーゴリ・ジュジンが支配し、彼は新興財閥の一員になっています。ロシアの電力業界は天然ガスとともに石炭にも依存しています。「ロシアの巨大油田がもうとっくに最盛期を過ぎた」と指摘する専門家もおり、今後は石炭にも注目が集まりそうです。


ロシアの新興財閥には、政治の世界に進出する人物も少なからず存在します。「国際産業銀行(メジュプロムバンク)」の共同経営者だったセルゲイ・プガチョフは1963年生まれ。レニングラード国立大学卒業後、ソ連産業建設銀行に勤務。1992年より2001年までメジュプロムバンク監査役会長を務めました。プーチン大統領と親しいものの、プーチンが新興財閥の政界進出を好まないため表舞台に出ることを控えていたようです。しかし2001年に上院議員(トゥヴァ共和国政府代表)に当選したことにより、メジュプロムバンク監査役会長を退任。現在も上院議員を務めていますが、今もなおメジュプロムバンクを支配しているといわれています。


新興財閥グループには新しい顔ぶれが登場しています。『フォーブス』発表の2007年世界長者番付の71位に選ばれたウラジミール・エブトゥシエンコフは、ロシアの巨大持ち株会社「システマ」の会長で、同社の株式の大部分を保有する大富豪です。また、ロシアにおける高級ウォッカ市場の3分の2の売上を占める「ルースキー・スタンダード」を製造・販売する「ロシアン・スタンダード」社長のルスタム・タリコは、ロシア最大の民間銀行であるロシアン・スタンダード銀行も所有し、推定資産は6,480億円と言われています。ロシアン・スタンダード社は2005年に「インペリア・ブランド」と呼ばれる商品で米国市場に参入。インペリアのレシピは、化学の元素周期表を作り出したことで有名な19世紀ロシアの科学者ディミトリ・メンデレーエフによって発見されたと伝えられています。


さらにニューフェイスといえば、女性の富豪も登場しています。モスクワ市長ユーリ・ルシコフの妻、エレーナ・バトゥーリナは1991年にプラスチックメーカー「インテコ」社を設立。その後、建設事業にも進出し、財を築きました。
ロシア全土に460以上の小売店「ぺチョーラチカ」を展開するアンドレイ・ロガチェフは、自社株30%をロンドン市場に上場し、巨額の利益を得た富豪。推定資産は1,416億円です。


さて、ロシアの天然ガス会社といえば、最大手の「ガスプロム」と、同社の協力関係にある石油・天然ガス会社「ロスネフチ」が著名ですが、2社以外では「スルグトネフチガス」があります。1960年代半ばに西シベリアで石油・ガスの生産を開始し、現在では主に西シベリアで石油、天然ガスの探査、抽出、輸送、精製、販売を行っており、石油・ガス田の運営やプロパンの生産、燃料油やエンジンオイルなどの生産も手がけています。同社の石油・ガスの備蓄量は約25億トンで、ロシアの石油生産シェアは13%となっています。


本社はモスクワですが、石油精製地である西シベリア平原の都市スルグトは、同社によって栄え、人口29万人のうち約半分が石油・天然ガス関係の仕事に就いているとされ、現在ホテルやオフィスビルなどの建設ラッシュを迎えています。バグダーノフ社長は、ソ連崩壊時に利権を求めて流れてくる官僚たちをシャットアウトするために都市を閉鎖し、従業員の株を安価で買い占めて会社を大きくした叩き上げの人物です。


By Master K/益田 慶