FXライフ30 中東・アラブ諸国の通貨 レバノンとイスラエル
レバノンとイスラエルを取り上げると、どうしてもイスラエルとパレスチナの対立や民族主義、宗教宗派の対立という構図に焦点を当てがちになるので、ここでは両国の産業や経済に絞って展開したい。
岐阜県程度の面積を有するレバノンは南をイスラエル、北東をシリアと接する。かつてはシリアの一部であったことや人口の約95%がアラブ人であることなどからシリアとは緊密な関係にある。両国ともフランスから独立した国でもある。通貨はレバノン・ポンド(LBP)だ。第二次世界大戦中に独立したレバノンは、保護貿易でなく、自由経済体制を進め、中東産油国の石油取引が行われ、自由貿易港のある首都ベイルートは金融セクターとして活気を呈した。この時期に多くの投資家や資本を蓄えた商人が誕生した。
しかし、内戦の勃発とイスラエル軍の侵攻によって大きな打撃を受けた。累計債務(約404億ドル)は国民総所得の約倍。財政赤字の解消に向けて近年では、付加価値税のアップやガソリン価格の自由化、税率のアップ、民間企業に対する規制緩和など改革プログラムが進められている。レバノンの主要産業は、貿易、金融業、宝石・貴金属加工業だ。歴史的に貿易・金融業を得意としていただけに潜在的なポテンシャルは高く、また観光資源も豊富だ。現在、フランスや米国、ドイツなどの援助を受けながら復興の道を探っている。
一方のイスラエルは、2003年度から成長路線を維持し、2005年、2006年とも5%成長を記録している。主にIT分野、医薬品の輸出増、外国直接投資の増加などが成長の要因だ。イスラエルが国連加盟国の中では先進国に分類されることはあまり知られていないが、同国は「中東のシリコンバレー」と呼ばれるほどハイテク産業、IT産業が盛んで、インテルやマイクロソフト、グーグルなど世界的な企業の研究室や支社が置かれている。特に科学分野の研究は世界の最先端にあるとされている。
ノーベル賞受賞者の数はもとより、アインシュタイン、フロイトがそうであったように、科学分野におけるユダヤ人の知性には目を見張るものがある。全労働者に占める科学技術研究、工学、医学にかかわる人口の割合はイスラエルが世界一である、という話は説得力に満ちている。
通貨は新シュッケル(ILS)だ。1985年にデノミを施行した際に発行された新紙幣・硬貨を、それ以前に流通していたシュケルと区別するために「新シュッケル」という名称が使われている。2006年度の輸出額を国別の前年対比で見ると、米国向けが大幅に増加(米国27.3%増、EU12.1%増、日本 11%増)している。外国直接融資も48億ドルから142億ドルと大幅に増加している。これはIT分野のスタートアップ企業を対象としたものが大半を占めている。
たとえば世界屈指の億万長者、米国の投資家ウェーレン・バフェットがイスラエルのイスカル社に対して資産評価額の80%に当たる40億ドルという過去最大の投資を行っている。イスカル社は超工切削工具のトップメーカーで、日本にも100%子会社の「イスカルジャパン」が置かれている。
また、同じく米国のサンマイクロシステムズはUSBフラッシュメモリー開発のMスタイルを15億ドルで買収している。このようにイスラエルの優良企業に対する直接投資や買収の例を挙げればきりがない。投資は米国だけでない。ドイツ・テレコムはイスラエルの大学敷地内にIT通信技術センターを1000万ドル以上の投資で設立、シンガポールの製薬メーカーはイスラエルに現地法人を設立すると発表。日本からはアステラス製薬が進出を決めたほか、ソフトバンクが数百万ドル規模の投資や技術提携を進めているという。
パレスチナと日常的な緊張関係にありながら、イスラエルはこのように世界各国から投資される国となっている。新聞やテレビのニュースからは見えてこないが、ひとつの国を「投資すべき企業」の数や技術の質の面から眺めてみるのもまた「世界の歩き方」といえよう。
By Master K/益田 慶