FX検定公認テキスト「外国為替FX投資の黄金律」 → 詳しくはこちら

FXライフ28 中東・アラブ諸国の通貨 イエメンとカタール

アラビア半島の南西に位置するイエメン共和国は、サウジアラビア、オマーンと国境を接する。穏健な軍事政権が支配した旧北イエメンと、中央集権的な一党独裁の社会主義体制だった旧南イエメンが、1990年に合併して誕生した新しい国で、アラビア半島諸国唯一共和制をとる立憲国家である。通貨はイエメン・リアル(YER)。


原油埋蔵量29億バレルの産油国で、貿易収支は増えつつあるが、アラブ首長国連邦や中国、サウジアラビアからの食料や機械類の輸入量が多いので帳消しとなっている。1994年には旧南イエメンが再独立を求め、内戦が勃発。その結果、港湾都市アデンとその周辺が激しい被害を受け、インフレと通貨の切り下げが生じた。


砂漠地帯に位置することから水不足という問題を抱えているものの、長い間イエメン経済を支えてきたのは穀物生産と「モカ」で知られるコーヒーであった。しかし他に海外との競争に勝てるほどの独自の産業がないこともあり、石油開発で潤う隣国のサウジアラビアに出稼ぎに行く労働者が多い。失業率の高さ(約35%)が示すように貧しい国で、IMF、世界銀行の支援を受け、経済改革に取り組んでいる最中だ。ドイツ、フランス、イギリスなど欧州が主な援助国となり、給水や保険・医療、職業訓練といった分野を中心に支援している。


唯一の明るいニュースは2007年に発見された天然ガス田。4900億立方メートルが確認され、2008年後半以降のLNG(液化天然ガス)生産開始をめざし、液化プラントの建設が進められている。南北の独立や湾岸戦争、内戦などによって開発が遅れてきたが、石油、天然ガス以外にも岩塩、石灰岩などの天然資源が豊富にあると見られている。それらが外貨獲得の手段となるには、支援国の大規模な開発援助が必要だろう。

同じくアラビア半島にあり、南はサウジアラビアと接し、北西はペルシャ湾を挟んでバーレーンと面するカタールは、石油と天然ガスに依存する豊かな国だ。1940年に高品質の石油がカタール半島西岸で発見され、イギリス・オランダ・フランス・アメリカ共同国益会社「カタール石油会社」が開発を進め、カタールに繁栄をもたらした。OPECには設立翌年に加盟している。1971年に英国から独立。通貨はカタール・リアル(QAR)だ。


首長家であるサーニ家の男子が元首、首長を務める首長制をとっており、実質的には絶対君主制と変わらない。1995年にハマド皇太子が首長就任後、自由化・民主化が進められ、石油輸出港であった首都ドーハは外資系企業が集まる国際都市へと成長した。「中東のCNN」と呼ばれる衛星放送「アルジャジーラ」の本部が置かれていることや、1994年のワールドカップアジア地区最終予選の日本代表最終戦「ドーハの悲劇」でよく知られる都市である。


カタールは石油・天然ガスの輸出が順調で、特に世界最大級と目される天然ガス田の開発が経済に大きく貢献している。GDPは21.2%(2005年)を達成し、貿易黒字を続けている。日本も同国から石油・天然ガスを輸入し、その量は毎年増えている。豊かな国であることから、インド、パキスタン、イランなどからの外国人労働者が多く、国内労働力の4分の3は外国人労働者である。この点ではアラブ首長国連邦ドバイと酷似している。課題は石油・天然ガス依存型経済からの脱却だ。現在、石油化学、化学肥料、製鉄、セメントなど産業開発に力が注がれている。


イエメンとカタールは同じ産油国でありながら、経済的な豊かさはまったく異なる。このように中東諸国にも大きな経済格差を発見することができる。俯瞰して見ると、イエメンのように内戦の起こる国は政治・経済的に不安定で、その結果、産業開発も後手に回ってしまうということだろう。反対にカタールのように早くに外資系企業を受け入れ、石油開発に国家の存亡をかけ、オイルマネーを蓄積してきた国は、その潤沢な資金によって次の産業を興すことが可能になるということである。


By Master K/益田 慶