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世界資源戦争14 新興産油国・石油企業の躍進 ラテンアメリカの資源ナショナリズム

OPEC設立当初からの加盟国ベネズエラは当然のことながら新興産油国ではないが、今回はベネズエラの資源ナショナリズムの影響力の大きさと、オイルメジャーに迫る勢いを見せるベネズエラ国営石油企業「ペトロレス・デ・ベネズエラ」(PDVSA)についてふれてみたい。新興石油企業の躍進という観点からすれば、同社は1999年にチャベスがベネズエラの大統領に就任以降、またたく間に南米屈指の企業に成長した稀有な存在。今や反米国派のリーダーである。


ベネズエラが自国の石油開発を国有化し、PDVSAを立ち上げたのは1976年のこと。サウジアラビアの石油会社アラムコが国有化され、当時のエクソンやモービル、テキサコ、シェブロンなど米国オイルメジャーがサウジアラビアの権益を失ったのと同じ年である。サウジアラビア、ベネズエラという二つの産油国が資源ナショナリズムを発揮し、石油開発を国有化したことで、「世界資源戦争マップ」は大きく塗り替えられた。石油利権の多極化が始まったのである。


ベネズエラの反米外交政策は以前からあったが、チャベスは核兵器開発疑惑が持ち上がったイランを支持し、国際的な石油価格が上昇するにつれ、ブッシュ米国大統領を名指しで非難しはじめた。そして米国が提唱するFTAA(米州自由貿易園構想)を排除し、中南米の統合を掲げたのである。


先にエクソンモービルがベネズエラ政府に対して「事業撤退に追い込まれた」として補償を求めて提訴した事件についてふれておこう。ベネズエラは2007年、オリノコ川流域でメジャーが出資するプロジェクトの国有化を宣言し、PDVSAの出資比率を従来の半分以下から6割以上に引き上げた。ベネズエラ政府とエクソンモービルは国有化に伴う補償や利益配分の交渉をしたが、不調に終わった。


そこでエクソンモービルが訴訟に踏み切ったのだ。2008年2月初旬、米ニューヨーク連邦地裁、英国、オランダの裁判所は同社の主張を受け入れ、ベネズエラが支払いに応じなかった場合は、PDVSAが海外に保有する総額120億ドル(約1兆3000億円)の資産差し押さえを命じた。いわゆる海外資産凍結である。ベネズエラの資源ナショナリズムと国際石油資本の対立は今後、国際調停に入ると見られている。


大統領就任以降、チャベスは精力的に動いた。まずブラジル、アルゼンチン、ベネズエラの三国共同出資によるプロジェクト「ペトロスル」創設を各国に呼びかけ、2005年にこれを設立。ペトロスルは南米各国のエネルギー企業を統括する任務を担い、石油を輸入に依存しているカリブ諸国にベネズエラから安定的な石油の供給を行うことを目的としている。チャベス大統領は中南米諸国とカリブ海諸国への影響力の拡大を目論んでいるのであろう。事実PDVSAはベネズエラ国外の中南米の販売拠点をアルゼンチンやブラジル、ボリビア、エクアドルにまで伸ばしている。


ベネズエラは2005年、カリブ海沿岸の13ヶ国との間でエネルギー協力協定「ペトロカリブ」を締結し、カリブ海諸国に安い価格(国際価格から40%ダウン)で石油供給を始めた。さらにペトロカリブ計画の下、石油を供給しているカリブ海諸国を対象に、各国輸入額の40%に関して長期融資を開始。また中南米各国の製油所建設にも積極的に乗り出し、ジョイントベンチャーを立ち上げる一方、パイプラインを建設し、天然ガスを供給する事業も開始した。


中南米の天然ガス埋蔵量は、ベネズエラが抜きん出ている(第2位のボリビアの約6倍)。この豊富な地下資源に目をつけ、天然ガスを隣国に供給するためのパイプライン建設に着手したのである。その最初のプロジェクトが、ベネズエラ最大の産油地帯であるマラカイボとコロンビアを結ぶ250キロのパイプラインだ。チャベス大統領の戦略は抜け目がない。ボリビアの天然ガス事業を国有化させ、外国企業は採掘業務しかできないように仕向け、採掘されるガスの管理、販売をPDVSAが担うように持ち込んだのだ。


By Master K/益田 慶