世界資源戦争 9 石油開発の歴史 ロシア・サハリンプロジェクトの進展と中国の動向
ロシア政府がサハリンでの天然ガス・石油開発プロジェクト「サハリンⅡ」の開発中止令を発令した2006年末、同プロジェクトにロシアの国営ガス会社ガスプロムの参入が決定した。ロシア政府のゴリ押しとしか表現できない参入劇であった。結果、ガスプロム社はシェル・サハリン・ホールディングスB.V.(ロイヤル・ダッチ/シェルグループ子会社)、三井サハリン・ホールディングスB.V.(三井物産子会社)、ダイヤモンド・ガス・サハリンB.V.(三菱商事子会社)の合弁会社である「サハリン・エナジー・インベストメント社」の株式50%を取得。ロイヤル・ダッチ・シェルは55% から27.5%に激減、三井物産25%は12.5%へ、三菱商事は20%から10%に減った。
2007年7月、ロシア政府は国営ガスプロム社が株式の半分を占めるサハリン・エナジー・インベストメント社の環境是正計画を承認した。ロシア政府が国営企業の事業を認めないわけがない。スタート当初に主導権を握ったロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事はまんまとロシア政府の策略にはめられたかのようだ。ロシア進出を計画していた他の日本企業から「ロシアは政府主導で国益重視のビジネスを進める。ロシア進出は慎重に考える」といった声があがったのはこの頃だ。
ともあれ、このような過程を経て、2007年夏から「サハリンII」は新たなチームで開発を進めた。「サハリンII」プロジェクトは現在、日量約8万バレルの原油(夏季半年間)を生産し、現在、第2段階開発に入っている。建設完了後、日量約17万バレル(通年生産)の原油及び年間960万トンの液化天然ガス(LNG)を生産する予定だ。第2段階の工事進捗率は現時点で8割を超えており、今日までに約120億米ドルの資金が投下されている。建設には1万7千人以上を雇用しており、その約7割はロシア国籍。ロシア政府は石油開発と自国の雇用促進を同時にやってのけたのである。
天然ガスについては、LNG(液化天然ガス)に加工し、サハリン縦断パイプラインで輸送する計画で、LNGの生産開始見込みは2008年中頃を目指している。これがロシアから最初の極東アジア向けの天然ガスの供給となり、豊富な埋蔵量と需要地に近いというメリットを有することから、アジアにおける今後の天然ガスの供給安定性の向上に大きくかかわってくるだろう。
LNGの引き取りは、日本を中心として、韓国、北米などをマーケット対象とし、東京電力、東京ガスなどと長期引き取りに関する合意に達している。両社とも電力・ガスともに近い未来に輸入に頼らざるを得ない事態を想定したのだろう。他にも大阪ガスと広島ガスが2008年から20年間にわたって年間 20万トンのLNGの供給を契約、中部電力は2011年から15年間、年間約50万トンの契約を結んでいる。
「サハリンII」プロジェクトは、石油と天然ガスのアジア・太平洋マーケットが中国とインドの経済発展にともない拡大していることと無関係ではない。ロシア政府と日本企業はそこを見据えた投資である。一方、今後もエネルギー需要の増加が見込まれる中国とインドは、石油開発をはじめとした資源獲得に積極的だ。つまり資源外交である。
では、2003年以来、米国に次ぐ世界第2位の石油消費国であり、同じく現在世界第2位の原油輸入国であるの中国(1位米国、3位日本)は、原油をどの国から輸入しているのだろうか? やはり中東産油国からの輸入が大半を占めるが、近年輸入総量の約40%を占めているのがアフリカ諸国である。
中国の石油企業がアフリカ諸国とのエネルギー分野の建設と投資に参加、また双方向のチャンネルや中国アフリカ協力フォーラムを通じて中国政府はアフリカ諸国とのエネルギー協力を深める努力を続けてきた。さらに中国は2004年からベネズエラやコロンビアなどの中南米諸国とエネルギー開発協定を締結したのをはじめ、カザフスタンから中国への原油パイプライン建設に伴う両国提携など、政府による「資源外交」を活発に行っている。
By Master K/益田 慶