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ヨーロッパの財閥と企業グループ 47 欧州財閥の系譜 ロシア財閥 石油産業

『フォーブス』2007年度版の「世界の億万長者」番付で世界86位となったのが、「TNK-BP」CEOのゲルマン・カンです。「TNK-BP」はイギリスの大手石油会社BP(ブリティッシュ・ペトローリアムス)とロシア企業との合弁会社で、同じくロシアの新興財閥の一人、ビクトル(ヴィクター)・ベクセルベルグが共同経営者として名を連ねています。


その「TNK-BP」が今春3月に株式取得先として名前を挙げたのが、ロシア国営の石油会社「ロスネフチ」です。ロシア連邦政府の国有財産管理庁に管理されているので、実質ロシア政府の所有といえるでしょう。社長は新興財閥のひとりセルゲイ・ボグダンチコフです。ロスネフチは昨年12月、天然ガスの生産・供給量において世界最大のロシア企業「ガスプロム」と戦略的協力に関する合意に達し、包括的な提携関係を締結することに成功しました。両社の合併は、セルゲイ・ボグダンチコフが待遇に不満を示して、不首尾に終わりましたが、提携関係の合意によって油田・ガス田の開発、輸送、販売、新技術開発などを両社共同で事業化することになったばかりです。


そのロスネフチは同じく3月末、かつてロシアの大手石油会社であったが破綻した「ユコス」株(つまりはロスネフチが保有する自社株)の入札を表明していた「TNK-BP」に落札で勝ったと伝えられています。落札の決定内容は、持株比率9.44%、取得額約75億9000万ドル(ロシアの貨幣で1978億4000万ルーブル)でした。


ロスネフチは、依然ユコスが抱える豊富な石油資産(破綻したとはいえ、ユコスは、ユコストムスクネフチ、サマラネフチェガス、東シベリア石油/ガス会社、アンガルスク・ペトロケミカル社などの他に複数の石油精製会社を所有)を可能な限り買収したいと考えており、これが自社株買戻しの競売につながっているのです。


落札した株はロスネフチの新たなる資産獲得のために用立て、残りは市場で売却する予定だそうです。この入札に向けて、TNK-BPもロスネフチも互いに自らの子会社も参加させたり、多額の借入金を準備したりするなど、総力体制で臨んでいたようです。これはプーチン大統領の方針だろうと想像できます。つまり、「ロシア政府が保有する石油会社をイギリス資本が入っている会社に渡してなるものか」「高額で他国に売り渡すより、市場価格を下回っても本国で守ろう」という意気込みなのでしょう。その一方で、ロスネフチ社は守るだけでなく、攻撃もしています。昨年6月、中国の会社と組んでTNK-BP社が所有するロシアの鉱区を買収しています。これを中国企業のロシア進出と見るアナリストも少なくありません。


そのロスネフチ社は、対中国への投資により1千万トンの製油能力を持つ工場を建設する予定です。セルゲイ・ボグダンチコフが同社北京代表事務所の開所式典で明らかにしたところによれば、同社はさらにサハリンにおける石油探査開発で中国石油化工(シノペックコーポ)と協力提携しているとのことです。

一方、中国石油天然気集団(中国石油)は2006年7月、完全子会社である中国石油国際工程有限公司を通じて5億ドルの資金を投じ、ロスネフチ社の新規公開株(IPO株)6622万5200株を同日付で購入しています。これは中国がロシアに接近し、また同時にロスネフチが中国とのビジネスを拡げようとしていることに相違ありません。ロスネフチは昨年、中国石油天然気集団公司 との間で日産20万バーレルを精製する施設を共同運営することで合意し、同時に中国国内で独自のガソリンスタンド網を展開する計画があることも示唆しています。北京から200キロ程度の距離にある精製施設を最大の候補先としており、精製施設候補へは、ロシア及び中国双方から原油が供給される予定とのことです。この二つの大国が経済面で手を結ぶとなると、世界の経済マップは大きく塗り替えられるかもしれません。


By Master K/益田 慶