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ヨーロッパの財閥と企業グループ 42 欧州財閥の系譜  ロシア財閥

「フォーブス」誌発表の「2006年度の世界の億万長者」ランキングの第41位(2004年度の発表では124位)にのぼりつめたウラジミール・リシンは、2005年度に資産を11,770億円まで伸ばした新興財閥です。彼はノボリペツク製鉄所の会長を務め、「鉄鋼産業の重鎮」と呼ばれています。重鎮というくらいだから、老齢かと思いきや、1956年生まれの51歳です。


彼は1992年、ロシアのアルミニウム、鉄鋼輸出企業体「トランス・ワールド」グループと提携し、企業群の管理者になりました。2000年には、ロシア第4位の鉄鋼メーカー「ノボリペツク製鉄所」の9割の株式を取得。ミハイル・フリードマン率いる「アルファ・グループ」の最高幹部ピョートル・アーヴェン(アルファ銀行頭取)をアドバイザーにつけ、ロンドン証券取引所に進出を働きかけ、鉄鋼株の売買で約13億ドル(約1570億円相当)を取得したとされています。


同じく「フォーブス」誌発表の「2006年度の世界の億万長者」ランキングの第44位にランクインしたのが、ビクトル(ヴィクター)・ベクセルベルグです。彼は石油大手「TNK-BP」と、アルミ大手「SUAL(スアル)」の共同経営者です。この2社はどちらも、食うか食われるかの「ロシア企業戦国時代」の渦中にいます。
2006年秋、ロシア最大のアルミメーカー「ルスアル」が同国2位の「スアル」と、スイスの商社「グレンコア」のアルミニウム部門を買収することで基本合意したことが明らかになりました。ルスアル社は、先週のコラムで紹介した「アルミ王」オレグ・デリパスが所有する企業で、買収規模は約300億ドル(約3兆5000億円)になる見通し。買収が成立すれば、このグループは米アルコア社を抜き世界最大のアルミ地金メーカーとなります。「スアル」共同経営者のビクトル・ベクセルベルグは、果たしてどれだけの財産を得たのでしょうか。


一方の「TNK-BP」はイギリスの大手石油会社BP(ブリティッシュ・ペトローリアムス)とロシア企業との合弁会社です。先月3月27日、次のような最新ニュースが届きました。「TNK-BP」がロシア国営の石油会社「ロスネフチ」の株式取得に乗り出すことを表明したのです。ロスネフチの株式は、かつてロシアの大手石油会社であった「ユコス」の元社長ミハイル・ホドルコフスキーが所有していました。しかし、プーチン大統領への批判を表明したことから、政府に目をつけられ、2003年10月、脱税などの罪(ユコス事件)で逮捕、起訴され、その後、ユコスは解体され、ホドルコフスキーの資産も売却されました。


ロスネフチは1993年、ソビエト連邦時代のソ連石油工業省を母体に設立。名目上、株式は公開されていますが、ロシア政府の国有財産管理庁に管理されており、本業の石油、天然ガスから派生し、船舶、パイプライン会社や販促会社を傘下に収めています。中枢はKGB人脈に支配されていると言われる巨大企業グループです。


2005年11月に発表された1-6月期決算によると、純利益が24億4000万ドルで、売上高は98億6000万ドル。前年同期と比べると、これは「純利益は約8倍、売上高も4倍強」という驚異的な数字でした。原油価格の上昇も利益拡大の要因ですが、ホドルコフスキーの経済遺産、すなわちユコスの子会社ユガンスクネフチガスを吸収(買収)したことにあります。


現在、ロシア政府の管理下にあるロスネフチ株の公開市場価格は、およそ90億ドル(日本円で約1兆620億円)といわれています。そのロスネフチ株を取得するために、「TNK-BP」は入札に参加したわけですが、本家イギリスの「BP」からすれば、ロスネフチ株を取得し、広大なロシアの化石燃料を武器にして市場拡大を図りたいところ。ロシア企業との合弁会社を設立したのも、石油やガス開発に力を注ぐロシアに地盤を築くためだったのでしょう。

By Master K/益田 慶