ヨーロッパの財閥と企業グループ 40 欧州財閥の系譜 ロシア財閥4 ルクオイル
ロシア第2位の資産を誇るワギト・アレクペロフが経営する石油会社「ルクオイル」は、新生イラク誕生後の2004年夏、人道援助として数百万ドルを提供したほか、西シベリア及びボルゴグラードにおいてイラク人石油専門家の研修を引き受けました。また同社は5年間にわたり、イラク人専門家150名をロシア内の石油施設で研修することも約束しています。
アレクペロフは2005年9月、「こうした援助は、ロシア企業がイラクで石油事業を行う出発点である」と述べ、新生イラク政府の石油部門を下支えすることで油田権益の復活を目指す姿勢を鮮明にしました。
一方、イラク石油省は2005年6月、フセイン政権時代に締結された全ての石油契約を再検討するための閣僚委員会を設置すると発表。同時に石油省はフランスのトタール及びロシア、中国の石油企業と既存の石油開発契約を再交渉すると発表しました。他方、新たに選出された議会は、憲法に即した石油投資法の制定を予定しているとのことです。
ルクオイルは、米国のコノコフィリイプが自社株の17%を取得しさらに20%まで比率を引き上げることを計画していることもあって、見通しは明るくなったと考えているようです。但し、米国のイラク専門家は「油田契約の権限を誰が持つことになるかは、中央政府がどのようになるかにかっかっている」「イラクがまだ内戦の危機をはらんでいることを考えれば、まずはビジネスに安全な環境の回復が必要である」と語り、外国石油企業が油田の権益を獲得するまでにはまだまだ時間がかかるとの見方を示しています。
このようにロシアの新興財閥は、政治に深く関与していく傾向が強いのが特徴です。エリツィン政権で台頭したウラジーミル・ポターニンもその一人です。彼は2006年にロシアの経済紙「フィナンス」が発表した「ロシア富豪番付」で第9位にランクインした人物です。
ロシアでは2005年2月から2006年2月の1年間に株価が108%の上昇を記録したことを受けて、企業オーナーたちの持ち株の時価総額が急激に拡大し、多大な恩恵を受けたスーパーリッチが多数誕生する下地を生んだのです。
ウラジーミル・ポターニンは1961年、モスクワ生まれ。1883年、モスクワ国際関係大学卒(国際経済学専攻)。1883~1990年、対外経済関係省に勤めたのち起業。1991年、外国貿易会社(94年から金融産業グループ)「インターロス」総裁に就任しました。以降、ポターニンは破竹の勢いでロシア経済と政治に深く食い込んでいきます。
1992~1993年「国際金融社」銀行副総裁、後に総裁。1993年より「オネクシム銀行」を創立し、総裁を務めます。スイスに姉妹銀行を開設する一方、世界有数のニッケル製造企業「ノリリスク・ニッケル」の経営権を奪うなど、市場経済化の波に乗る新世代の経済人として知られるようになります。
ポターニンは同社の主要株主ですが、現在「ノリリスク・ニッケル」の社長を務めるのが、ミハイル・プロホロフです。彼は「ロシア富豪番付」で第8位にランクインしています。総資産額は67億ドル(約8000億円)。同社は、世界のニッケル市場で2割強のシェアを握っています。
ロシア連邦クラスノヤルスク地方にある都市ノリリスクは、世界有数のニッケル鉱山があるほか、銅やコバルトなどの金属を産出しています。ノリリスクのコンビナートは、世界のパラジウムの35%、白金の25%、ニッケルの20% 、ロジウムの20%、コバルトの10%を生産しています。「ノリリスク・ニッケル」を掌握したということは、プロホロフはニッケル市場に大きな影響力を持つようになったということです。
このようにロシアの新興財閥は、金融と天然資源の開発のどちらかで財を築いた人物が富に目立っています。
By Master K/益田 慶