ヨーロッパの財閥と企業グループ39 欧州財閥の系譜 ロシア財閥3 エネルギー企業
ロシアは原油埋蔵量において世界7位、生産においてサウジアラビア、アメリカに次ぐ第3位です。天然ガスの埋蔵量は世界1位、産出では世界2位です。このデータを見る限り、ロシアはエネルギー輸出に依存する国と言えるでしょう。
『フォーブス』が発表した2006年度版の「世界の億万長者」で第37位にランクインし、ロマン・アブラモビッチに続いてロシア第2位となったのが、ロシア石油会社最大手「ルクオイル」の代表を務めるワギト・アレクペロフです。彼の資産は110億ドルと発表されました。
「ルクオイル」は、1991年に旧ソ連時代の三つの石油採掘企業が統合され、国家コンツェルンとして発足した企業です。1995年に西シベリア、ボルゴグラード、ペルミなどの精油所、石油化学工場を保有し、さらにアストラハン石油などをグループに加えました。アメリカのアトランチック・リッチフィールド(ARCO)は、ルクオイルの戦略的パートナーで、同社の株式を保有しています。
ルクオイル社の動向に注目したいのは、ロシアのイラク戦争への関与の仕方とイラクの石油利権に深くかかわっているからです。一国の政治・経済だけを見ていては国際情勢を把握することはできません。
ルクオイルはサダム・フセイン時代の1997年、西クルナ油田の開発・生産契約を獲得しました。バスラ西方の北部ルメイラに位置する西クルナ油田の埋蔵量は、110億バレルから150億バレルと推計されています。ルクオイル社の西クルナ油田開発権(出資比率68%、予想投資額60億ドル)には、イラクの原油輸出と人道物資購入契約が含まれていました。これはプーチン大統領の意向が色濃く反映されていたと想像できます。つまり、ロシアは中東とつきあっていきうえで、イラクに大きな影響力を確保したいということです。
しかし、イラク政府は2002年12月、ルクオイルが「契約後の当初3ヶ月で最低2億ドルを油田に投資する」との約束を履行しなかったとして、契約を一方的に破棄します。当時のタリク・アジズ副首相は、2002年12月、「ルクオイルはワシントンに行き、フセイン政権転覆後の契約履行の保証を求めた」「こうした行為は受け入れられない」と語り、フセイン政権がルクオイルとの契約を破棄した舞台裏を解説しました。
イラクの確認石油埋蔵量は1,150億バレル(2004年末:BP統計)で、これは世界第3位の量です。ロシアは2002年、イラクに対し総額400億ドルに及ぶ協力プログラムの提供を申し出た背景には、イラクの油田開発を他国、特にアメリカ企業に渡さないための戦略があったようです。皮肉なことに、プログラムの提供の申し出は、アメリカを中心とした連合国がイラクに侵攻する1年前のことでした。
その後、イラクが保有するとされる大量破壊兵器の査察という国連決議を支持したロシアに対して、イラクは復讐します。前述したように2002年、西クルナ地区におけるルクオイル社との契約を破棄したのです。こうしてルクオイルは西クルナの油田開発の権利を失います。
現在ルクオイルは、イラクでの新政府の形成が喪失した西クルナ油田の権益を取り戻す機会になると受け止めているようです。ルクオイル・オーバーシーズのアンドレイ・クズヤエフ社長は2006年2月、ロンドンで「我が社は、2006年にイラクに新政府が成立することで、西クルナ油田を取り戻す交渉が再開されることになるのを願っている」と述べ、喪失した油田の権益の回復に希望を託していることを明言しました。
ロシア・プーチン政権にとってもイラクにおける油田開発の権利は、ぜひ手に入れたいもの。ロシア第2位の資産を誇る「ルクオイル」社長ワギト・アレクペロフの動向は、次週でもお届けします。
By Master K/益田 慶