FXライフ 23 中東・アラブ諸国の通貨
欧米諸国の概念では、"中東"とは「アフガニスタンを除く西アジアとアフリカ北東部の国々の総称」を表わす。これは国際政治学上の地理区部だ。一方"アラブ諸国"といった際は「アラブ人が中心となって国家を構成している国家」となる。アラビア半島・中東・北アフリカが該当する。日本人は、「アラブ諸国はイスラム教国」、「アラブ人は全員がイスラム教徒」、「アラブ人はアラビア語を話す」と思い込んでいるが、厳密にいえばそれらは事実と異なる。各国を紹介する際に説明していきたい。
まずアフリカの大国から紹介しよう。世界四大文明のひとつ古代エジプト文明が栄えたのがエジプトだ。通貨はエジプト・ポンド(EGP)。1922年にイギリスから独立するまで、欧州の列強に侵略されてきた国で、現在もEUとの関係が強い。輸出相手国は、インド、イタリア、米国、スペイン、英国。輸出品目は石油と石油関連製品が輸出製品の54%を占めている。現在、4大外貨収入源(観光、運河通航料、石油輸出、出稼ぎ外貨送金)が貿易赤字を補填する経済構造となっている。
2004年7月に発足したナズィーフ首相の経済改革が成果をあげ、エジプト経済は近年好況だ。経済改革とは、民間人を含む改革派の人材登用、経済活動の自由化、外国直接投資の誘致や工業生産・輸出の拡大などだ。平均関税率を14.9%から9.1%へ引き下げる関税改革、所得税を20~32%から10~20%に引き下げ、法人税を32%から20%に引き下げる税制改革、国営企業民営化などが進められ、GDPは5.1%(2004/2005年度実質)、6.90%(2005/2006年度)、7.1%(2006/2007年度)と伸びている。EUとの自由貿易協定(FTA)が2004年に発効されたことも大きく影響しているようだ。
エジプトの近代の歴史をふりかえると、スエズ運河の国有化とイスラエルの正式承認が大きな分岐点であったことが見えてくる。第二次中東戦争によって英・仏からスエズ運河通行料の権利を奪い返したことで、エジプトはアラブ諸国に対してもリーダーシップを発揮できるようになった。ちなみに、スエズ運河から得られる収入は35億3,559万ドル(2005/2006年度)。同国の年間石油輸出額が102億ドル(2005/2006年度)であることを鑑みると、莫大な収入源であることがわかる。
また、エジプトがアラブ諸国の中で最初にイスラエルを承認したことはアラブ諸国に波紋を投げかけた。その後、エジプトは米国から軍事・経済援助を受けるなど対米協調外交を進め、イスラム主義運動を弾圧して政治の安定化を図っている。
さて、「エジプト・ポンド」のように通貨にポンドを用いる国はほかにもある。たとえばフォークランド諸島ポンド(FKP)だ。南大西洋のイギリス領土であるフォークランド諸島政府が発行する通貨で、イギリス・ポンドと等価になっており、フォークランド諸島では両方の通貨が使用されている。同じくイギリス領であるサウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島でもフォークランド諸島ポンドが使われている。島の住民はイギリスから渡ってきたイギリス系白人がほとんどで公用語はもちろん英語だ。フォークランド諸島の産業は羊の放牧と漁業、観光業だが、フォークランド諸島周辺海域には600億バレルもの埋蔵量の油田があると見られている。
フォークランド諸島と聞いて思い浮かぶのが、1982年に勃発したアルゼンチンとイギリスによる「フォークランド紛争」だ。領有をめぐる紛争は米国や欧州諸国の支援を受けたイギリス軍の勝利に終わったが、紛争から25年を経た今日、油田が再び紛争の火種になりそうな気配だ。アルゼンチンが再び領有権を主張し、2007年4月、英国との油田共同開発プロジェクトを一方的にキャンセルしたほか、フォークランドで油田探索を行なっている英国企業に対し制裁措置を課すと発表したのである。「世界資源戦争」とリンクする展開が、南大西洋の諸島で現在進行形で進んでいることは覚えておいてほしい。
By Master K/益田 慶