アービトラージ発想法 Round 3 アービトラージの定義
アービトラージという言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本語では裁定とか、裁定取引と訳されていますので、経済紙などで目にすることもあるでしょう。
英語では、“arbitrage”と綴ります。似たような言葉で“arbitrageur”“arbiter”がありますが、“arbiter”は、決裁権者、決定者を意味しています。それに対して、“arbitrageur”は、投資における「鞘取り」「鞘取り業者」を意味しています。本書では、投資における「鞘取り」を主題にしています。ですから、狭義には“arbitrage”は「鞘取り」「裁定取引」、“arbitrageur”は、「鞘取り業者」「裁定取引投資家」といった意味合いで使っていきます。
狭義にと言ったのはアービトラージという言葉が使われるのは、たとえば日経225先物を売っていたファンドなどの機関投資家が、日経平均の下げを見て現物を買ったり、ETFを買ったりというような行為を裁定取引ということが多く、一般的に使われるのはこのような現物と先物の価格差を利用して売買を両建てするようなケースが大半だからです。
株価指数だけでなく、株式の市場間格差、株式と転換社債、国債の短期と長期の金利差などを利用した取引として裁定取引はよくおこなわれます。理論値と現実値は差異を生み、情報格差は価格差を生むものです。異なる市場では同じ商品、株式が売買されていても需給関係は異なりますから、需給ギャップは当然価格にも反映されるのです。
裁定取引は、とても高度で難しい投資のように思われるかもしれません。ある種のデリバティブであることに変わりはありませんが、実はとてもシンプルで、人間の根源的な部分に触れる経済行為なのです。人間が経済活動をおこなう上で、不確定なものを確実にする智慧として生まれたのが裁定取引、アービトラージです。
現代社会では、アービトラージは投資用語として使われ、人間社会における経済活動で意味するものは捨象されているのかもしれません。
アービトラージは、人間がもつ欲求、欲望、価値観を固定化し、安定化し、増大させる人智として発達してきました。
動物としての人間、人類は、いつの時点から社会性を持った人間になったのだろうか。
私の予想では、アービトラージは、人類がヒューマン・カインドからヒューマン・ビーイングに進化したときに、ことば、道具などと同様に人智として芽生えたのではないかと考えています。
By Master K/益田 慶