ヨーロッパの財閥と企業グループ 33 欧州財閥の系譜 スウェーデン財閥
北欧スウェーデン最強の財閥ウォーレンバーグ一族は、「スウェーデンのロックフェラー家」と呼ばれています。この一族は巨大企業グループを形成しています。
スウェーデン3位の大手銀行であるSEB(スカンジナビスカ・エンスクリダ・バンク)と持ち株投資会社「インベスター」を中核に、国内の通信機器大手エリクソン、家電・厨房機器大手エレクトロラックス、航空機と自動車大手サーブ、産業機材大手アトラス・コプコ、ヘルスケア大手ガンブロ、素材エンジニアリング大手サンドビックなどを傘下に従えています。
国外ではスイス本社のエンジニアリング最大手ABB(アセア・ブラウン・ボベリ)、イギリスとスウェーデンに本部を置く世界3位の製薬会社アストラゼネカなども一族が支配する企業です。また一族の資産を管理するナット・アンド・アリス・ウォーレンバーグ財団は、「ノーベル賞」で知られるノーベル財団最大のスポンサーのひとつです。
グループの中で日本でもなじみの深いのは「エリクソン」と「サーブ」でしょう。エリクソンはモバイル・インターネットおよびブロードバンド・インターネット・コミュニケーションの将来を最先端技術で築くリーディング・カンパニーです。
世界140ヶ国以上で画期的なソリューションを提供し、日本ではソニーとの共同出資企業「ソニー・エリクソン」の社名でも知られています。近年では携帯電話分野で富に名前が知れ渡っています。ちなみにウォーレンバーグ・グループのヨーラン・リンダール前 ABB社長は、ソニーの取締役を務め、アングロ・アメリカンの副会長にも就任した人物です。
SAABブランドで知られる乗用車部門は1990年にゼネラルモータース(GM)との折半合資会社「サーブ・オートモービル」に移管され、2000年にはインベスターはサーブ自動車部門の株式50%をGMに売却し、GMの完全子会社となりました。
GMとウォーレンバーグ・グループは、以前から密接な関係を維持してきました。インベスター、ABB、アストラゼネカ、サンドビックの4社の会長を兼任するパーシー・バーネルは、1996年からGMの社外取締役に就任しており、M&Aを含めた政策を協調して行ってきました。
パーシー・バーネルは世界的に評価の高い経営者で、ダボス会議を主催する「ワールド・エコノミック・フォーラム財団」の副会長も務めています。
余談ですが、GMがサーブを買収したことに対抗し、フォードは同じスウェーデンのボルボの自動車部門を買収しました。さらにドイツのフォルクスワーゲンが、サーブの兄弟会社でトラックブランドを受け持つスカニア社の筆頭株主となりました。スカニアはトラック、バス、工業用ディーゼルエンジンの世界的なメーカーです。日本では日野自動車が「日野スカニア」ブランドで販売しています。
ちなみに現在のサーブは、GM、ウォーレンバーグ・グループに次いで、イギリス最大の航空宇宙企業「BAEシステムズ」が33%の株式を保有しています。その取締役会は、ウォーレンバーグ・グループからマーカス・ウォーレンバーグが参加しています。
重要な会社には、積極的に経営に参加する姿勢がうかがえます。このマーカス・ウォーレンバーグという名前は覚えておいてください。国際商業会議所ICC(International Chamber of Commerce)の現会長です。
ICCは1919年、欧米のビジネスリーダー達によって設立されました。現在128カ国7,400社の最高責任者からなる世界経済機構です。そのトップがウォーレンバーグ財閥のマーカス・ウォーレンバーグなのです。
ICCは国連の最高諮問機関のひとつでもあり、世界規模で国際通商・投資を促進し、市場経済システムの安定をはかることを目的に活動しています。
By Master K/益田 慶