ヨーロッパの財閥と企業グループ 32 欧州財閥の系譜 スペイン財閥

移民の国アメリカで台頭しているのがヒスパニック系。その母国スペインにも有力な財閥ファミリーが存在します。
日本にも深くかかわっているのが、サンタンデール・セントラル・イスパノ銀行(BSCH)会長のエミリオ・ボティンです。彼は「新生銀行」の社外取締役を務めていますが、3年前にサンタンデールグループ会長に就任したスペイン有数の財閥の当主なのです。


BSCHは1999年にサンタンダール銀行とセントラル・イスパノ銀行が合併して誕生しました。その後、約2年でスペイン第1位の利益をあげる銀行に躍進し、今日ではHSBC(イギリス)やドイツ銀行と肩を並べる世界有数の銀行にまで成長しました。その要因のひとつが、スコットランド・ロイヤルバンク(RBS)への資本参加により同行の7%の株を取得し、メキシコやフラジル、ベネゼエラなど中南米諸国での銀行買収に成功したことが挙げられます。実はスコットランド・ロイヤルバンクはロンドン・ロスチャイルド一族が支配する銀行です。つまり、ロスチャイルド財閥の支援を受けて飛躍したということです。


BSCH は2004年、イギリスでの総資産額第6位の「アビー・ナショナル」を約1兆5890億円で買収。この買収劇で株式時価総額では、世界第8位の銀行へと浮上しました。アビー・ナショナルを加えたサンタンデールグループの株式時価総額は欧州最大規模となりました。グループ全体の貸し付け対象国は、40%がイギリス、39%がスペインということです。2006年2月に発表した前年度の通期決算では、純利益が前年比72%増となり、過去最高を更新したとのこと。


サンタンダール銀行はもともとボティン家に支配されてきた銀行ですが、ボティン家の銀行支配はそれだけではありません。スペインにはバネスト銀行やバンキンテール銀行などがありますが、バネスト銀行の社長にはエミリオ・ボティンの長女が、バンキンテール銀行の社長にはエミリオ・ボティンの弟が就任しています。つまり、スペインの3銀行をボティン家が牛耳っているということです。一族が3つの銀行を支配するなど日本では考えられないことです。


スペインには、ほかにもフアンとカルロスの兄弟をリーダーとするマルチ一族がいます。祖父がスペインと北アフリカのタバコの輸出入を独占的に取り扱って財を築いたようです。現在、一族は、建設、金融、食品スーパーなどの事業を展開しています。


最後にスペインを代表する複合多国籍企業「レプソンYPFグループ」を紹介しておきましょう。スペインのレプソルが1999年にアルゼンチンの国有石油会社YPFを買収して誕生した「レプソンYPF」は世界10大石油企業のひとつ。28ヵ国に活動拠点を持つ、中南米では最大のエネルギー関連企業です。スペインに5ヵ所、アルゼンチンに3ヵ所、ペルーに1ヵ所の精製工場を所有しています。同社は石油採掘と生産、精製、石油製品の販売のほか、液化天然ガスでは年間300万トンほどの販売実績を誇る世界第3位の企業です。

化学工業分野でもスペインとアルゼンチンにコンビナートを稼動させています。ちなみに、2006年10月には、ボリビア政府との間で、天然ガス開発における保有権益の82%を同政府に配分する新契約を締結しました。まさに近代的な多国籍企業グループです。レプソンYPFは、スペイン株式市場における最も重要に取引指標であるIBEX35の中の1社。同社の株式はスペイン、二ューヨーク、ブエノスアイレスの各証券取引所で公開されています。


By Master K/益田 慶