FXライフ 19 ユーロの歴史と欧州の通貨 ラトビアとリトアニア
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)のうちラトビアとリトアニアの通貨と経済状況を紹介しよう。
ソ連崩壊後、バルト三国の中で各種インフラ整備が最も遅れたのがラトビアである。ソ連時代には重工業が盛んであったが、独立時に工業拠点が破棄され、産業が継承できなかったのだ。ラトビアの通貨はラット(LAT)。2004年、EUに加盟した。主要産業は、木材加工、金属加工、繊維などで、ほぼ全てのエネルギー源をロシアに依存している。
国際競争力に乏しいラトビアは近年、外国企業の誘致を進めてきた。現在リーガ、ヴェンツピルス、リエパヤの3港を自由貿易港に指定し、外国企業を誘致して中継貿易を推進している。不動産、金融、製造業などへの外国からの直接投資が実を結び、首都リーガには外資系ホテルが参入し、観光業が活性化している。
2005年のGDPが10.2%と高い成長率を示したのは海外の直接投資の効果だろう。しかし首都に投資が集中したことで地方との格差が著しくなっているのも事実だ。通過貨物は、石油及び石油関連製品が半分以上を占め、CIS諸国と西欧諸国を結ぶ経路が主なルートとなっている。貿易相手国はEU諸国が主流だ。日本の対ラトビア輸出の主要品目は、自動車、フォークリフトトラック、モーターサイクルなどで、日本との貿易額は伸びている。2005年4月、ユーロ参加への最終段階(ERM2)に入り、2010年をめどにユーロ導入を目指している。
バルト三国の中で最も大きな国がリトアニアだ。通貨はリスタ(LTL)。2002年よりユーロとの固定相場制が導入され、1ユーロ=3.4528リタスとなっている。2005年度のGDPは7.3%を記録し、ラトビア同様、高い成長率をキープしている。西欧諸国との貿易を拡大したことが大きな要因で、国有企業の大規模な民営化が進められてきた。同国も2010年をめどにユーロ導入を目指している。
リトアニアはエストニア、ラトビアと異なり、石油が採掘されている。主要産業は石油精製業、電力産業で、原油や鉱物燃料を主にスイスやドイツ、ロシアへ輸出している。ソ連崩壊後、リトアニア国営となったマゼイキウ・ナフタ社はバルト三国でただ一つの精油所やパイプライン網を所有し、年間1000万トンの石油を精製、販売額はリトアニアのGDPの10%に達していた。
しかし、2006年、ポーランドの石油会社オルレンが、リトアニア最大の石油会社マゼイキウ・ナフタの株式53.7%を、倒産したロシア・ユコス社の清算会社から買収する契約に調印。総額は約15億ドル。オルレン社は、リトアニア政府が所有する株式30.7%も、約8億5,000万ドルで取得した。ロシア政府は、脱税等で倒産したユコス社の資産扱いについてオルレン側と争っていたが、最終的に売却に合意した。リトアニア政府も歓迎の声明を発表したという。
この株式売買には伏線があった。2002年にロシアの新興財閥ミハイル・ホドロスキー率いるユコス社がリトアニア国営マゼイキウ・ナフタ社の株式取得を進めた。しかし、2003年にユコスの巨額脱税が摘発され、ホドロスキーが逮捕。2006年には、追徴税支払いによる負債からユコスは破産、解体に至った。そこでマゼイキウ・ナフタ社も売却の対象となり、ロシア、カザフスタン、ポーランドの企業が名乗りをあげていたのである。
当初はロシアの企業が有力な候補であったが、ロシア側にマゼイキウ・ナフタ社の企業価値を下げる意図があったので、リトアニア政府はロシアを敬遠し、ポーランドの石油会社オルレンへの売却が決定した。しかし、その直後、ロシアからの送油停止が始まったことから政治問題に発展しつつあった。その後、精油所で大規模な火災が発生。パイプラインが使えなくなり、年間原油精製量は前年から大きく下回った。
ともあれ、バルト三国はロシアの支配から脱却し、ヨーロッパに接近している。経済成長率も順調なので、おそらくユーロ導入はスムーズに行われるであろう。
By Master K/益田 慶