100年企業 1 はじめに
日本には創業から百年以上続いている企業が約15,000社ある。150万社の1パーセントだ。これを「百年企業」と呼ぶことにする。明治維新という空前絶後の構造改革、世界的な不況、帝国主義によるアジア侵略、敗戦、財閥解体、焼け跡からの再スタート、高度経済成長、オイルショック、貿易摩擦、円高、バブル崩壊、銀行再編、外資系の進出、不良債権の解消などをくぐりぬけ、現在もなお健全な経営を続ける企業は、いかにして生き残ったのか。なぜ生き残れたのか。
百年以上の歴史を刻んできた背景にはそれなりの理由、経営の秘訣、競合他社に勝つだけの商品の差別化やサービスに魅力があったからだろう。時代の変化に敏感に対応できる、革新を拒まない体質もあったと想像できる。あるいは代々の経営者が受け継いできたしっかりとした経営哲学もあるに違いない。
「百年企業」は合理的・近代的な経営手法を取り入れてきた企業でもある。お菓子製造や伝統工芸品のメーカーなど、世に言う「老舗」のように、昔からずっと同じ商品だけを販売してきた企業もあるだろう。しかし、どの時代にあっても社会に歓迎される要素を宿してきたということは、やはり何かしら独自性があったからといえよう。単独で、あるいは自力だけでは百年もの間、経営を続けることができなかった企業もあるだろう。それらの企業は、財閥や企業グループに属すことで潤沢な運転資金を得たり、原材料の仕入れや販売ルートを確保したりしてきたのかもしれない。それも百年もの長きにわたり継続してこられた理由のひとつである。
今週からスタートするこのコラムは、百年企業が百年もの間、生き抜いてきた理由を探るものである。その歴史は各社で異なるものの、カメラを引いて見れば日本における資本主義経済の発展の歴史でもあり、経済大国への発展に寄与した歴史、さらに日本における近代経営の発展の歴史でもある。つまり、「百年企業」の特徴を研究すれば、日本経済や近代経営の発展の軌跡が見えてくるのである。
経営面では、年功序列や終身雇用など雇用制度、メインバンク制や企業グループによる長期安定的な取引関係、業界団体内調整による規制の強い市場など「日本的経営」と呼ばれる経営慣行の是非にも及ぶ。近年、能力主義・成功報酬制度、契約社員や派遣社員などを導入する企業が増えた一方で「日本的経営」を見直す経営者も少なくない。
巨大企業にとっては、貿易摩擦や不良債権、バブルの崩壊、外資系グループの進出、合併・買収が大きな分岐点になったであろう。百年企業はそれらの分岐点、ひいては危機をいかにして乗り越えてきたのか。その秘策にも迫ってみたい。そして商品開発の特徴にもふれてみたい。
また「百年企業」は、日本の企業グループや企業系列を理解するうえでの参考になり、業界地図を俯瞰して眺められる機会にもなることだろう。
皆さんがご存知のように旧財閥系企業グループには、三菱グループ、三井グループ、住友グループ、芙蓉グループ、みずほグループ、UFJグループなどがあるが、銀行再編によって東京三菱UFJ銀行、三井住友銀行が誕生したことで旧財閥系企業グループにも大きな変化が生まれている。三越や高島屋、伊勢丹など百貨店業界の老舗の再編も著しい。
さらに、「百年企業」は業界によって生存率が異なることも興味深い。これには業界の歴史や市場規模、独占企業の有無、新規参入を拒むような法律的な規制などが大きな鍵になっているようだ。また政治とのつながりの深い業界もあるので、研究の対象は幅広い。
このように「百年企業」は、いろんな角度から分析することができる対象である。百年企業の成り立ちや発展、経営方針、業界地図などを知ることが、FXライフを豊かに彩ってくれることを期待する。
By Master K/益田 慶