FX検定公認テキスト「外国為替FX投資の黄金律」 → 詳しくはこちら

ヨーロッパの財閥と企業グループ6 ロスチャイルド家の興亡 ワーテルローの戦い

ロスチャイルド家が、政治・経済をも動かす欧州一の金融財閥に成り上がるきっかけとなった大賭博を紹介しましょう。ナポレオンがロシア征服をたくらみ、冬将軍と戦っている頃、ロスチャイルド家の専用馬車はナポレオンへの反撃の準備を記した密書を携えて各国を駆け巡っていました。ロスチャイルド家のネットワークが反ナポレオン戦線の通信網になっていたのです。


ナポレオン討伐を狙うイギリスのウェリントン将軍は、ナポレオンと戦う同盟国に1500ポンドの軍資金を用立てたとされています。この資金を調達したのがロスチャイルド家でした。彼らは親子・兄弟の連携プレーによって、ドーバー海峡を越えて金貨や手形を密かに輸送したのです。しかし、これは慈善事業ではありません。ロスチャイルド家は、「儲かるところに投資する」一族です。彼らの大きな賭けが始まっていたのです。ポルトガルでナポレオンへの反撃の機会をうかがうものの、軍資金に困窮するイギリスのウェリントン将軍に金貨を送り届けたロスチャイルド家は、この時、一族をあげた大きな勝負の時を迎えていました。


ナポレオン・ボナパルトの最後の戦いとなった1815年の「ワーテルローの戦い」。ヨーロッパを支配しようと侵略戦争を続けた皇帝ナポレオン率いるフランス軍と、イギリス・オランダ連合軍およびプロイセン軍(ホーエンツォレルン家が支配する王国の軍隊)が対峙した天下分け目のこの戦争の戦況を入手しながら、ロンドン・ロスチャイルド商会のネイサンは「その時期」を狙っていました。


ワーテルローでナポレオンが勝てば、イギリスの国債は暴落して紙くずとなります。反対にウェリントン将軍が勝てばイギリス国債は暴騰します。つまり「どちらが勝ったか」という情報をいち早く入手できる者が有利なのです。


ロスチャイルド家は「ワーテルローの戦い」の勝敗を見届ける者を手配していたので、イギリス軍の使者よりも早くイギリスのネイサンのもとに「イギリス軍勝利」の連絡が届きました。伝書鳩を使ったのか、伝達用の馬と船を配置しておいたからできたのか不明ですが、当時のロスチャイルド家はドーバー海峡に自家用の快速船を何隻も運航させていたという記録が残っています。また、ドーバーとロンドンの間にロスチャイルド家専用の早馬を常備していたともいわれています。そんな情報網によってネイサンはイギリスでただ一人、「イギリス軍勝利」の事実を知っていました。


ネイサンは、ただちにロンドン金融街シティの証券取引所に向かい、イギリス国債を売って出ました。ネイサンが売りに出たのを見て、「イギリス軍敗北」という情報が流れ、相場は大暴落しました。「大英帝国破滅の日が近い」と周囲はパニックに陥ったようです。そんな混乱の最中、紙くず同然となった国債をひそかに買い集めているグループがいました。ネイサンの使用人です。そして「その時期」を見計らってネイサンも国債の買いに転じました。


翌日、ウェリントン将軍の使いが「イギリス軍勝利」のニュースをイギリスに届けた時に、イギリス国債が破格の値上がりを示したことは言うまでもないでしょう。底値で買い、高値で売ったことで、当時の金で「100万ポンドの利益」を上げたという伝説が残っています。市場の小さな時代のことですから、この利益はまさに天文学的数字といえるでしょう。こうして金融王ロスチャイルド財閥が誕生し、このファミリーがヨーロッパ全土を支配するようになっていくのです。


この大きな賭けの結果を見ることなく、初代ロスチャイルドである父マイヤーは68歳で他界します。遺訓は「わが家の資産は一切公表しないこと。兄弟が仲良く手を取り合って事業を展開すること。ロスチャイルド家の事業の跡取りには男子しかなれないこと」などであったとされています。ファミリーの資産が公開されないことで、ロスチャイルド財閥は世界でもっともミステリアスな存在になっていくのです。


By Master K/益田 慶