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ヨーロッパの財閥と企業グループ3 ロスチャイルド家の興亡 マイヤーと5人の息子たち

ロスチャイルド家の初代マイヤーは、ヨーロッパ最大の財産家に取り入れられるよう奔走します。今回はマイヤーが自ら構築した金融のメカニズムを紹介しましょう。


まず、大金持ちの領主の古銭収集に協力して大量のコインや紙幣を買い取ったり、預かったりします。「古銭を預かる」とは、現在の質屋と同じシステムのことです。顧客は金貨や銀貨をロスチャイルド商会に預け、「預かり証」を受け取ります。預かり証は貨幣と等価で支払いの用を果たしていました。預かり証のシステムは、金本位制の紙幣の原型と見ることもできます。


両替商は立派な金庫を持っていなければビジネスができません。預かったコインや紙幣は安全な金庫に保管されました。そこでマイヤーは預かった貨幣のほぼ3分の1の量が、受け取りに来ないまま金庫に眠っていることに気づいたのです。


たとえば3000マルク分の金貨を預かれば、2000マルクに対して書いた預かり証を発行し、2000マルクが世の中に流通することになりますが、1000マルクの金貨はいつも倉庫に眠っていることになります。
そこでマイヤーは、残りの1000マルクの金貨についても無断で預かり証を発行すれば、それを自らの資金として運用でき、他人の金貨を手元に利子をとることができると考えたのです。1000マルクが利子によって大金を生み出す可能性がある、つまりレバレッジ(テコの原理)です。金融派生商品(デリバティブ)と原理は同じです。ロスチャイルド商会は、このノウハウを自らのものにし、預かり証によって貸付け金利を手にしていきます。


やがてマイヤーは古銭を通じて知り合った財務担当者から、イギリス振出しの為替手形を割引く仕事をもらうようになります。この業務については後述しますが、マイヤーは宮廷御用達となったことで経済のしくみを学び、財力を貯えていきます。そして大きな転機が訪れます。


ロスチャイルド家が出入りするフランクフルト地方の領主ヴィルヘルム公の父、フリードリッヒ大王が他界し、ヴィルヘルム公はヨーロッパ最大の資産を相続してヴムィルヘルム9世となったのです。古銭の取引や手形の割引によって王家の信頼を得ていたロスチャイルド家は、「王家の宮廷銀行家」の地位に昇格し、国家財政の金融業務に携わるようになります。国王が領土を統治していた時代、王家の金融業務を担当することは、そのまま国家財政の金融業務に携わることを意味しています。


ロスチャイルド商会を運営するマイヤーには、5人の息子たちがいました。彼は息子たちに仕事を教えながら業務を拡大していきます。


マイヤーは、ヨーロッパ最大の財力を持つヴムィルヘルム9世の金庫管理業務に食い込みました。
ヴムィルヘルム9世は、国王になる前から、領内の若者を集め、兵隊にする訓練をほどこし、イギリスのように植民地戦争に明け暮れる国に傭兵として貸していました。多くの国が領土を奪い合うヨーロッパでは、「傭兵派遣」は珍しいことではありませんでした。兵隊不足のイギリスは植民地確保のためにドイツ人傭兵を雇い入れ、ヴムィルヘルム公は多額の金を儲けていたのです。イギリスは傭兵代金を小切手でヴムィルヘルム公に支払っていました。マイヤーが宮廷の金融業務を担うきっかけとなった手形の割引は、このイギリス振出しのものだったのです。


マイヤーは5人の息子の中から、長男のアムシェルと次男のサロモンをヴムィルヘルム9世の宮殿に専属金融担当者として差し向けます。そしてこれまで以上の多額の小切手の割引業務を請け負います。フランス革命の年、1789年からロスチャイルド商会は宮廷の正式な金融機関に加えられ、大銀行と肩を並べるようになります。


二十歳まで銀行に奉公していたマイヤーにとって銀行業務は得意な仕事でした。しかし、ロスチャイルド商会の狙いは、銀行業務だけではありませんでした。マイヤーは、イギリスが振り出した小切手をイギリスで購入する綿製品の支払いに利用すれば、手形の割引よりも2倍、3倍の利益を生み、手形割引の手数料も安くすることができる、と考えたのです。


By Master K/益田 慶